読書

外岡秀俊『情報のさばき方』朝日新書

外岡秀俊『情報のさばき方-新聞記者の実践ヒント』朝日新書、2006年 10年近く前に入手してから時々部分部分を読んできたのだけれど、今回完読。 「インデックス情報」という名前はいまいちこなれていないけれど、メタデータの一種と見ると成程ここ10年でその…

関千枝子『図書館の誕生』

関千枝子『図書館の誕生 ドキュメント日野市立図書館の20年』日本図書館協会、1986年 かつて北上次郎は日野市立図書館誕生のこの物語を「水滸伝」と評したが(『図書館読本 別冊・本の雑誌13』本の雑誌社、2000年)、初代館長による前川恒雄『移動図書館ひまわ…

『図書館を育てた人々 日本編1』

石井敦編『図書館を育てた人々 日本編1』日本図書館協会、1983年 田中稲城から中田邦造まで、明治期から戦前期までの代表的な図書館関係者18人を取り上げた評伝集で、『図書館雑誌』での連載記事が元なので、実物を手に取ると思ったよりコンパクトだった。 …

回顧・2016年 読んだ本 附 読んだ漫画

過去の分は回顧・2014 読んだ本 附 読んだ漫画 - 書房日記と回顧・2015 読んだ本 附 読んだ漫画 - 書房日記。 しかし2年前はこれでも多少は読んでいたんだなあと感じてしまうし、過去2年と比べても更に数が減ったことは否めず、更に途中からほとんど個別記事…

F・W・クロフツ『樽』

F・W・クロフツ 大久保康雄訳『樽』創元推理文庫、1965年個人的には「名探偵の推理」に頼り過ぎない、取り立てて社会と隔絶した場も設定されずに捜査過程を淡々と追っていく作風は結構好きで、第一次世界大戦前のロンドン・パリに跨る捜査行も面白かったと思う…

上地隆蔵『新手への挑戦 佐藤康光小伝』

上地隆蔵『新手への挑戦 佐藤康光小伝』NHK出版、2009年 団鬼六編『将棋 日本の名随筆 別巻8』作品社、1991年と後藤元気編『将棋エッセイコレクション』ちくま文庫、2014年という2つの将棋随筆選集を手に取ると、前者は主に大山升田や中原米長までの世代を中…

菅谷明子『未来をつくる図書館』

菅谷明子『未来をつくる図書館』岩波新書、2003年 ジャーナリストである著者が、図書館司書でも図書館学の研究者でもなく一人の利用者として、ニューヨークの図書館で受けた新鮮な印象を大きな原点として編み出されている。 著者の経験を踏まえた、ニューヨ…

岡部ださく『世界の駄っ作機』

岡部ださく『世界の駄っ作機』大日本絵画、1999年 筆名岡部ださく、こと岡部いさくによる「世界の駄っ作機」シリーズの初巻。 しかしプラモデルさえろくにない機体の紹介をシリーズ化したモデルグラフィックス誌も大したものと言うか、初期の読者から実在し…

大塚信一『理想の出版を求めて 一編集者の回想 1963-2003』

大塚信一『理想の出版を求めて 一編集者の回想 1963-2003』トランスビュー、2006年 岩波現代文庫や、現代文庫に再録されている物も多い同時代ライブラリーのラインナップを眺めていて、何となく「岩波らしくない」本を見かけることがある。著者は古典教養主…

岡部ださく『世界の駄っ作機』2

岡部ださく『世界の駄っ作機』2 大日本絵画、2000年 岡部いさくについては、本や雑誌といった読書界隈よりも、最近ではウェブ界隈でのミリタリーやアニメに関連した領域における方が名前が通っているかもしれないけれども、編集者出身の航空機ライターとして…

『平和をつくる原理 小田実全集 評論第5巻』

『平和をつくる原理 小田実全集 評論第5巻』講談社、2010年 初出は小田実『平和をつくる原理』講談社、1966年で、内容的には1969年に出版された新版が収録されている。もともとは雑誌や新聞等に掲載された文章を編んだもので、講談社版全集のソフトな印象の…

回顧・2015 読んだ本 附 読んだ漫画

まず去年の「回顧・2014」の記事はこちらです。去年は余り読んだ本の個別記事を書いていなかったので、結構面白い本で個別記事なしの本も結構入っており、ともすれば今年の回顧記事よりも情報量も多いかと思います。 これは改めて言及しておきたい、という本…

阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男』

阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』平凡社、1974年 1970年代以降の、社会史を中心とする戦後歴史学の変容を代表する1冊、と史学史の読書案内風に位置づけることも出来るのだろうけれど、そういった予備知識ゼロで読んでも、面白さから一気に読…

大島弓子『ダリアの帯』

大島弓子『ダリアの帯』白泉社文庫、1996年 大島弓子と言えば「グーグー」の印象が強すぎて(実際、グーグーしか置いていない書店やブックオフも少なくない)、実質的な大島弓子経験1冊目。「サマータイム」といい「ダリアの帯」といい、絵柄か何かから「若…

手塚治虫『火の鳥 鳳凰編』

手塚治虫『火の鳥 鳳凰編』朝日ソノラマ、1978年 現在一番入手しやすいのは、手塚治虫全集版か、角川文庫版か、どちらかしら。黎明編・未来編・ヤマト編・異形編・復活編は繰り返し読んだ割に、シリーズ中屈指の傑作と称される鳳凰編は、実は15年ぐらい前に…

マイク・ロイコ『男のコラム』1

マイク・ロイコ 井上一馬訳『男のコラム』1 河出文庫、1992年 これも、荻原魚雷の『古本暮らし』晶文社、2007年や『活字と自活』本の雑誌社、で紹介されていなかったら、古本屋の棚で見つけられなかったであろう一冊。本文は282頁しかないけれど、108円だっ…

薄久代編著『色のない地球儀 資料・東大図書館物語』

薄久代編著『色のない地球儀 資料・東大図書館物語』同時代社、1987年 大学図書館、それも日本の大学図書館の歴史に詳しい層にとっては結構知名度が高いようなのだけれども、本郷に馴染のある東京大学の関係者や十五年戦争に関心のある読者にとっても、本書…

『まんが 羽生善治物語』

日本将棋連盟監修、高橋美幸原作、まきのまさる画『まんが 羽生善治物語』くもん出版、1995年『ヒカルの碁』という一大ヒット作を擁する囲碁漫画に対して、近年『3月のライオン』が登場した将棋漫画だけれども、これは将棋漫画の中でもかなりの奇書である1冊…

小野不由美『黄昏の岸 暁の天』

小野不由美『黄昏の岸 暁の天』新潮文庫、2014年 今年の回顧記事を出そうと思ったら、まだまだ既読で記事にしていない本が何冊もあって、取りあえず書けるものから書いていくことにする。 今年『風の万里 黎明の空』から『丕緒の鳥』までを一気に読んでいく…

岡崎武志『古本道入門』

岡崎武志『古本道入門』中公新書ラクレ、2011年 私見だけれども、古本に関する新書というのも、意外に少ない。岩波新書・中公新書辺りで決定版が出ていないし、岡崎をはじめ多くの古本本を出しているちくま文庫に対し、ちくま新書にも余り古本本は入っていな…

小野不由美『図南の翼』

小野不由美『図南の翼』新潮文庫、2013年 新潮文庫版の『図南の翼』には、北上次郎の解説が付いている。 そしてこれは『本の雑誌』等の、書評やミステリーの世界に詳しい方々にとっては今更なお話だけれど、北上次郎はペンネームであり、目黒考二その人であ…

小野不由美『風の万里 黎明の朝』上・下

小野不由美『風の万里 黎明の朝』上 新潮文庫、2013年 小野不由美『風の万里 黎明の朝』下 新潮文庫、2013年 講談社文庫版で揃えていたところに、この夏偶々新潮文庫の新装版を棚で見つけ、かれこれ5年ぶりに中断していたこの巻の途中以降を読み終えた。陽子…

谷川史子『清々と』3 

谷川史子『清々と』3 少年画報社、2015年 少年画報社の漫画本は、カヴァーをめくると設定資料だったりカバーとは別のイラストだったりが描かれているという、ちょっとした豆知識を知ったという。しかしまあ前の1・2巻の記事からはや3年かあ、と思う。4巻で完…

谷川俊太郎編『辻征夫詩集』

谷川俊太郎編『辻征夫詩集』岩波文庫、2015年 荻原魚雷『本と怠け者』ちくま文庫、2011年で紹介されていることに去年気が付かなかったら、多分手に取ることさえ無かったかもしれない1冊。現代詩文庫を見ると正直多少慄いてしまうような当方だけに、「詩集」…

森薫『シャーリー』2 

森薫『シャーリー』2 エンターブレイン、2014年 確か『エマ』を一通り揃えてしまった後に、ブックオフで見つけて「お、『エマ』と同系統の作品かな」と思って買い込み、「どうも『エマ』のプロトタイプ臭いなあ」と思いながら読みだしてみると、いやもう何と…

小田実『われ=われの哲学』

小田実『われ=われの哲学』岩波新書黄版、1986年 小田実に対する悪評は、ウェブ上では事欠かない。 では彼の文章に対する悪評を見るかと言えば、まずお目にかからないのが常ではないだろうか。せいぜい、彼の文章の一部に示された認識の一部を、いささか暴…

岡崎武志『古本でお散歩』

岡崎武志『古本でお散歩』ちくま文庫、2001年 そもそも古本に関する本を読んだことのある人間は、読書する習慣のある人の中で1割にも満たないであろうから、古本本を複数読んでいる当方などは古本本に関してはまあ一応は有段者だろうと思わなくはないのだけ…

荻原魚雷『書生の処世』

荻原魚雷『書生の処世』本の雑誌社、2015年 『本の雑誌』での連載をまとめた1冊…ただし初出時に比べると各回について平均5-6行分を削った、とのことで、これは毎月読んでいる訳ではない読者にとっては、少し気になる異同だ。出身地の三重県に帰省した際の話…

清水知久『ベトナム戦争の時代』有斐閣新書

清水知久『ベトナム戦争の時代』有斐閣新書、1985年 読了後に記事を書いていない本が、何時の間にか溜まってしまっている。そして記事を書かない時期というのは、大抵は読む方も停滞している時期と言える。左足を踏み出して、右足も動かそうという訳である。…

酒見賢一『後宮小説』新潮文庫

酒見賢一『後宮小説』新潮文庫、1993年 これもまたまたid:Mukkeさんの本棚企画で挙げられていた1冊。今年は『ルバイヤート』に始まり、読了本への氏の影響が結構顕著な年なのかもしれない。ここで取り上げる順番は前後するけれども、当方が小野不由美の「十…