外岡秀俊『情報のさばき方』朝日新書

 10年近く前に入手してから時々部分部分を読んできたのだけれど、今回完読。

 「インデックス情報」という名前はいまいちこなれていないけれど、メタデータの一種と見ると成程ここ10年でその重要性は更に高まっている。

 「おわりに」で立花隆のジャーナリズム論が好意的に引用されており、インプットとアウトプットの両面を扱っている辺りは立花の『「知」のソフトウェア』講談社現代新書1984年とも似ているけれど、立花が徹底的に手元に資料を集めるのに対して著者が徹底的に「インデックス情報」のみにこだわり本も捨ててしまうのは対称的で面白いところ。

 その著者にして扱いが「意外に難しい」と述べ現物を取っておくのが雑誌記事だという(29p)。これは成程と感じた。

 私個人が本書で最も有益だった箇所は、ルーズリーフに「一日一行」という日々の個人記録の残し方の部分(181p)で、最初に本書を読んだ頃から実践しているが、最低限の個人史の記録として確かにとても役に立った。

それにしても「読者は記者のことを知らず、記者の個人的な経験や思い出にも興味はありません」とまで書いて主観を排すという注意点を記している(206p)だけあって、インターネットで著者のことを検索すればすぐに分かる、著者が文学賞まで受賞している小説家でもあることを読み取れる箇所が全くないことには恐れ入った。あるいは著者なりのユーモアの効かせ方なのかもしれないけれど。