谷川俊太郎編『辻征夫詩集』

荻原魚雷『本と怠け者』ちくま文庫、2011年で紹介されていることに去年気が付かなかったら、多分手に取ることさえ無かったかもしれない1冊。現代詩文庫を見ると正直多少慄いてしまうような当方だけに、「詩集」を読むのも何時以来だったろう。

地名がごく自然に詩の中に、それも風光明媚な名勝でもなんでもない「池袋」「隅田川」「豪徳寺」といった所が入っていて、「エッセイ」ではないのかとも思ったりした。

気が付いたら昼間に読むことはなくなり、夜に少しだけ読むようになった。読む方もまた、小説とは違った読み方に自ずから為るものらしい。

辻は荻原本の紹介にもある通り、俸給生活者として働きながら詩を作った時期が長い。それにしても、谷川俊太郎との対談で1年に2,3篇しか書かなかったという年もあったと語っていたり(148頁)、小説に対して詩を書く時間は短いと述べていたり(188頁)するのを読むと、何となく抱いている作家が小説を書く時のように詩人も四六時中詩を書いて考えているという印象を改めさせられたのだった。

そうやって作られるからか、多分時間が有り余る生活をしている時にではなく、何かを抱えて時間が限られている時にこそ、詩がストンと読み手の側に入ってくるのかもしれない。