森薫『シャーリー』2 

確か『エマ』を一通り揃えてしまった後に、ブックオフで見つけて「お、『エマ』と同系統の作品かな」と思って買い込み、「どうも『エマ』のプロトタイプ臭いなあ」と思いながら読みだしてみると、いやもう何というかメイド分100%の濃さに圧倒されてしまったというのが、『シャーリー』エンターブレイン、2003年でした。

その『シャーリー』に去年続編が出た、ということをブックマークで知り、今回ようやく読了。

漫画の短編集が好きな人間としても、1冊切りで終わってしまうのは勿体ないなあと思わなくもなかっただけに、今回シャーリーとベネットの物語がシリーズ化されていたというのは素直に喜ばしく(それにしても作者の思い入れの並々ならぬところに、いつも通り「あとがき」を見て苦笑)。

蓄音器が出てくるシーンで、あれこれは19世紀じゃないのかと初めて気づいたのですが、ヴィクトリア朝でなく20世紀初頭のエドワード朝という辺りがまた、作者のこだわりが出ているなあと。

そもそもベネットの経営するカフェと自宅とを別々に設定している辺りが、また芸が細かいというか。シャーリーをベネットのものだけにしておきたいという作者の幾分邪悪な意図のようなものを感じ取るのはいささかメタに過ぎる視点でしょうか。

設定が上手いのは、シャーリーもベネットも基本的に出来る人だったり頼りになる人だったりするのですが、それぞれ抜けているところがあって、その失敗談がまたとても話になるという辺りでしょうか。

あとは『エマ』に続いてOVAかドラマCDにでもなったら面白いだろうと思うのですけれども。