『図書館を育てた人々 日本編1』

 田中稲城から中田邦造まで、明治期から戦前期までの代表的な図書館関係者18人を取り上げた評伝集で、『図書館雑誌』での連載記事が元なので、実物を手に取ると思ったよりコンパクトだった。
 
 個人史としてみると状況に恵まれなかったり不遇だったりと、なかなかに暗い話も少なくない。石井敦があとがきで述べるように、まさに「苦闘」という語が相応しいけれど、ただでさえ高等教育経験者が少なかった時期の帝大出身者など、相対的には皆結構な高学歴だったり、人事制度の確立前なので公共図書館大学図書館などの館種の区別を超えて複数の図書館を渡り歩いたりと、反面なかなかに自由と言えば自由なところもあったのだなあという印象も受けた。

 このシリーズ、日本編1に続いてアメリカを対象とした外国編1が出たところでストップし、単独でイギリス篇が出ている。戦後日本を対象とした「日本編2」が企画されることを期待したいものだ。