回顧・2016年 読んだ本 附 読んだ漫画

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 しかし2年前はこれでも多少は読んでいたんだなあと感じてしまうし、過去2年と比べても更に数が減ったことは否めず、更に途中からほとんど個別記事を書いていないので、来年は今年分の個別記事からやり直すことになるだろう。

 とりあえず落とせないものを順不同で列挙すると、桜井英治『贈与の歴史学中公新書、2011年はこれは周囲の誰からも評価されているのが納得の、2010年代の歴史系新書でもオールタイムベストに入るのではないかという面白さで、未読の方は是非御一読下さいと素直に言いたくなる1冊でした。

 今年復刊された前川恒雄『移動図書館ひまわり号』夏葉社、2016年(初版は筑摩書房、1988年)も、日本図書館史に残る一大変革の当事者による証言という枠を超えた、現場での現実と理想との間での苦闘を描いた傑作ノンフィクションと言って良い面白さだった。


 これも今年復刊された森崎和江『からゆきさん』朝日文庫、1980年も、従軍慰安婦の前提となる戦前の売買春の歴史を当事者の女性を描いている中で、九州の村というローカルな場を起点に文字通り世界を動き生きた女性たちを通じて19世紀から20世紀のアジアにおける帝国主義と植民地支配のダイナミックな世界を描いた凄い本だった。

 野党共闘という形での社会運動の大同団結が見られた一方で、戦後の社会運動史の評価というよりも評判が落ちていくばかりの感もある昨今、澤井余志郎『ガリ切りの記 : 生活記録運動と四日市公害』影書房、2012年は地域での社会運動についての記録として興味深かったけれど、後半の公害問題を巡る政治の在り方は原発事故後の現在読み直しても重いものがあった。

 また十五年戦争期の社会史と地域史を総ざらいした感のある、大串潤児『「銃後」の民衆経験』岩波書店、2016年も今年出ている。

 漫画の方が相対的に比重が高くなった感もあり、池田理代子オルフェウスの窓』とやまむらはじめ『天にひびき』は今年完読して終盤にうーむとなったけれども、それぞれクラシック好きは一読の価値ありと感じた。池田理代子だと『おにいさまへ…』の方が好きな感じだった。

 青池保子も『イブの息子たち』の続きに加えて、『七つの海七つの空』『エル・アルコン』を読んで、エロイカのコミカルさはどこへやらの『Z』に通じるような生臭い展開におおっとなった。こうの史代この世界の片隅に』はいい加減映画版も観てみたいところ、Cuvie『絢爛たるグランドセーヌ』もなかなか良かったし森薫乙嫁語り』は19世紀の中央アジアとか歴史研究者顔負けの濃さでこれも続きが読みたい。

 あとは島本和彦アオイホノオ』も1・2巻だけでさすがの濃さで、庵野秀明の描写と新谷かおるへの言及だけでも満足してしまい続きまで読めていない。篠原ウミハル『図書館の主』も、図書館漫画は意外に?良作揃いのジャンル、という法則に違わず読んでみるとなかなか良かった。

という辺りで時間切れです。