読書

中野三敏『和本のすすめ』

中野三敏『和本のすすめ -江戸を読み解くために』岩波新書新赤版、2011年 id:DG-Lawさんの世界史本について書いた時(http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150705/1436089732)、意外なところで役立った1冊。概説書としては、率直に言って結構説教臭い。日本人…

目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』

目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』本の雑誌社、2007年 1冊の本として読むのは、実は意外に難しいのかもしれない。何しろ3月から読みだして、読み終わったのが7月だったりする。『本の雑誌』に連載されていたこの日記、毎月連載されていた際の1月分が実に妥当だ…

塩川伸明『民族とネイション』岩波新書新赤版、2008年

塩川伸明『民族とネイション -ナショナリズムという難問』岩波新書新赤版、2008年 id:Mukkeさん一押しの1冊。今年ようやく積読から解消したのだけれど、最初に手に取って前半を斜め読みしたのは5年前の秋のはずで、長いようであっという間のような5年間なの…

読んだ本 オマル・ハイヤーム 小川亮作訳『ルバイヤート』岩波文庫、1979年改版

オマル・ハイヤーム 小川亮作訳『ルバイヤート』岩波文庫、1979年改版 もともと新年最初の読了本であったのだけれども、今回記事に書こうと思って再読。そう大部ではないので、頭から読んでもそれ程時間はかからない。どうしても詩というよりも、断片的な哲…

読んだ本 遠山茂樹『歴史学から歴史教育へ』岩崎書店、1980年

遠山茂樹『歴史学から歴史教育へ』岩崎書店、1980年 この論文集に収録されている論文や講演記録は、主に1950年代・1960年代に書かれたものが中心となっている。 本書の構成をみると、冒頭の著者自身による「歴史教育論への私の立場-『はしがき』に代えて」に…

『シリーズ大学6 組織としての大学』岩波書店、2013年

『シリーズ大学6 組織としての大学 -役割や機能をどうみるか』岩波書店、2013年 まず編集委員の一人である広田照幸が「序論 大学という組織をどう見るか」で書いているように、とかく大学組織を民間企業と同一視して経営改革を求める議論が一般には強いけれ…

『シリーズ大学1 グローバリゼーション、社会変動と大学』岩波書店、2013年

『シリーズ大学1 グローバリゼーション、社会変動と大学』岩波書店、2013年 シリーズ出版当初に関心は持ったのだけれど、率直に言ってさほど積極的に読む気はしなかった。目次を見て、高等教育論が専門でない人間にとっては、いささか冗長な構成に感じられた…

簡易版読了本リスト 2015年 その1

気が向いたら、そのうち記事にしていきたいもので。 オマル・ハイヤーム 小川亮作訳『ルバイヤート』岩波文庫、1979年改版 塩川伸明『民族とネイション』岩波新書新赤版、2008年 大島弓子『ダリアの帯』白泉社文庫、1999年 目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』本…

稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』を巡るメモ(四)

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年 以下は、問題順に思いついたことをつらつらと(構成を考えられなくなってきた、とも言う)。10.アメリカ史の怪19世紀以降の近現代史の方…

稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』を巡るメモ(三)

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年実は一連の記事の中で、1か所だけ「社会思想社」になっていたので、訂正致しました。「既に倒産した現代教養文庫の版元じゃないよ」と言わ…

稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』を巡るメモ(二)

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年3.長大な問題集ようやく今回からが本書を読んでみての、中身に関するメモということになるけれども、まず前提として、今回メモの対象とす…

稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』を巡るメモ(一)

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年 1.はじめにこちらの1冊に関しては、昨日一応の「書評」を既に書いてみたので(http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150705/1436034081)、…

書評 稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年本書は、これまで大学の入学試験科目「世界史」で各大学が出題してきた入試問題について、著者がウェブ上で試みてきた評論を基に、「悪問…

小森健太朗・遊井かなめ編著『声優論』

小森健太朗・遊井かなめ編著『声優論 アニメを彩る女神たち 島本須美から雨宮天まで』河出書房新社、2015年 本書は単著としては恐らく第一号と言って良い、声優に関する評論集。 これまで声優に関する本と言えば、まずは声優自身による自伝的な本の系譜があ…

水谷優子『ケロリンな日々』

水谷優子『ケロリンな日々』メディアワークス、1995年1990年代、いわゆる「第三次声優ブーム」の頃に出た声優本の1冊、ということになるだろうか。ただ、他の女性声優たちのエッセイ集がいかにも「アイドル」色が強そうなのに比べると、結構3枚目の部分もあ…

回顧・2014 読んだ本 附 読んだ漫画

来年に向けて準備しなければならないことも、学んでおかなければならないことも、片付けておかなければならないことも山積していますし、その上風邪気味ですけれども、そこからの逃避として簡潔に(そもそも読書は一種の逃避と言って良いのかもしれないと思…

簡易版 読了本リスト 4

シェンキェーヴィチ 木村彰一訳『クオ・ワディス』上 岩波文庫 シェンキェーヴィチ 木村彰一訳『クオ・ワディス』中 岩波文庫 シェンキェーヴィチ 木村彰一訳『クオ・ワディス』下 岩波文庫 北村薫『夜の蝉』創元推理文庫、1996年 北村薫『秋の花』創元推理…

読んだ本 高山博『ハード・アカデミズムの時代』

高山博『ハード・アカデミズムの時代』講談社、1998年 230p 002 西洋中世史を専攻する研究者が、アカデミズムを知の独創・創造を目指す「ハード・アカデミズム」と知の伝承を目指す「ソフト・アカデミズム」とに分けて分析した上で、日本のアカデミズム・大…

読んだ本 笠原十九司『ファミリー版世界と日本の歴史9 現代1 戦争と平和』

笠原十九司『ファミリー版世界と日本の歴史9 現代1 戦争と平和』大月書店、1988年 222p 209 12冊からなるシリーズの全巻を読み切った訳ではない私にとって、この巻自体の特色とシリーズ全体の特徴とを分けて取り上げることは困難であるから、基本的に本巻を…

簡易版読了本リスト3 2月〜3月

樹村みのり『彼らの犯罪』朝日新聞社、2009年 北村薫『空飛ぶ馬』 創元推理文庫、1994年 魚住昭『特捜検察の闇』文春文庫、2003年 下山進『勝負の分かれ目』講談社、1999年 小林信也『スポーツジャーナリストで成功する法』草思社、2004年

簡易版読了本リスト2 2月

大岡昇平『事件』新潮文庫、1980年 笠原十九司『ファミリー版世界と日本の歴史9 現代1 戦争と平和』大月書店、1988年 小松良郎・松田由美『ファミリー版世界と日本の歴史11 現代3 新しい出発』大月書店、1988年 槐一男・宮原武夫・浜林正夫・石渡延男・鈴木…

更新停滞中 附 簡易版読了本リスト

読み終えた物はあるのですが時間等の都合もあって、それらについて書けずにいます。そこで取りあえず読み終えた物を記して一覧表にしておきます。数か月の間放っておいたものもあり、トムスンのホームズ贋作シリーズなどはトリックなどについての記憶が怪し…

読んだ本 萩尾望都『11人いる!』

萩尾望都『11人いる!』小学館文庫、1994年 323p 726.1 人類が地球から多くの星々に進出している遥かな未来、宇宙大学への入学試験は実技試験にさしかかっていた。受験生たちは10人一組となって閉鎖された宇宙船で過ごす課題を与えられる。しかし宇宙船に集…

読んだ本 柳沼行『ふたつのスピカ』6〜9

柳沼行『ふたつのスピカ』6 メディアファクトリー、2004年 (726.1?) 柳沼行『ふたつのスピカ』7 メディアファクトリー、2004年 (726.1?) 柳沼行『ふたつのスピカ』8 メディアファクトリー、2005年 726.1 柳沼行『ふたつのスピカ』9 メディアファクトリ…

読んだ本 良知力『青きドナウの乱痴気』

良知力『青きドナウの乱痴気』平凡社、1985年 229p 234.6 概念が余り登場しない文章。理論や構造ではなく細部に亘る具体の記述から話は始まる。だからこそ「プロレタリア」とか「市民」と云った語が使用されて表現される時の重みが違う。 描かれるのは1848年…

読んだ本 岩城宏之『音の影』

岩城宏之『音の影』 文春文庫、2008年 299p 762.8 頭文字のABC順に作曲家を取り上げてその作曲家に関する話を綴ったエッセイ。当然だがアルファベット毎に濃淡はあり、数人まとめて取り上げて一回で終わってしまう頭文字もあれば、Bのようにベートーヴェン・…

読んだ本 岡田暁生『西洋音楽史』

岡田暁生『西洋音楽史』中公新書、2005年 762.3 別に音楽史に限ったことではないが、過去の人物や事件のそれぞれについて記述したものを単純にまとめただけで「歴史」を記述したつもりになっている本は少なくない。そういった形式の、事典或いはアンソロジー…

読んだ本 萩尾望都『ポーの一族』

萩尾望都『ポーの一族』1-3 小学館文庫、1998年 726.1 少女漫画の歴史に名を残す名作として知られる作品。辻惟雄『日本美術の歴史』(東京大学出版会、2005年)で古今の美術作品と共に平然と取り上げられていたのを覚えている。ただ私の周囲だけなのかもしれ…

読んだ本 坂野潤治『明治国家の終焉』

坂野潤治『明治国家の終焉 1900年体制の崩壊』ちくま学芸文庫、2010年 257,4p 312.1 『大正政変』(ミネルヴァ書房、1982年)を改題・加筆訂正した物。予算問題を巡る政友会・元老・陸軍・海軍・国民党などの非政友派・貴族院など各政治勢力の動きを丹念に追…

読んだ本 齋藤純一『公共性』

齋藤純一『公共性』(岩波書店、2000年) 120p 311.13 思考のフロンティアシリーズ第1期の一冊。ハンナ・アレント*1、ユルゲン・ハーバマスからカントまで公共性を巡る思想を辿り、随所に現代社会の問題への関心と思考を反映させつつ、公共性ってなあにとい…