F・W・クロフツ『樽』

F・W・クロフツ 大久保康雄訳『樽』創元推理文庫、1965年

個人的には「名探偵の推理」に頼り過ぎない、取り立てて社会と隔絶した場も設定されずに捜査過程を淡々と追っていく作風は結構好きで、第一次世界大戦前のロンドン・パリに跨る捜査行も面白かったと思う。

以下で紹介されているように、多数の翻訳版が出版されており、日本の推理小説界に与えた影響も大きいという。

http://b.hatena.ne.jp/entry/blog.livedoor.jp/yotsuya151/archives/18691707.html

創元推理文庫でも、新訳版が出ているけれど、この旧訳版もそこまで読みにくいということはないと思った。

ただし、もともとが微に入り細に入り、淡々と経過を書く平板な構成という面もあるし、冒頭部の樽の追跡行辺りは正直それ程熱を入れて読めなかったところもあった。第二部のパリでの捜査辺りまで読み進めれば、後はどんどん読める。