岡部ださく『世界の駄っ作機』2

岡部いさくについては、本や雑誌といった読書界隈よりも、最近ではウェブ界隈でのミリタリーやアニメに関連した領域における方が名前が通っているかもしれないけれども、編集者出身の航空機ライターとしての「傑作機」ならぬ人気シリーズといえば、この『世界の駄っ作機』シリーズということになる。

なお著者名が「岡部いさく」ではなく、もう1つのペンネームである「岡部ださく」である点は、検索に当たっての要注意事項である。

いわゆる「傑作機」ではない失敗機で試作止まりに終わったり、量産はされたが想定していた目的では実戦でほとんど活躍出来なかった軍用機の数々が取り上げられている。
こうして30機以上も並べられて一気に読むと、航空機の設計というものはなかなか成功に対して失敗の数が多い、一筋縄ではいかない分野であることが良く分かる。

著者はもともとイギリス機マニアとして著名だけれど、なるほど第二次世界大戦期までのイギリスはまぎれもない航空大国で様々な機体に手を出すほどの軍事的余裕と航空機工業力を有していたのだなあと、駄作機を眺めると逆に感じさせられる。

1930年代の複葉機から全金属製単葉機への移行と、1940年代から1950年代にかけてのジェット・ロケット機への移行の紆余曲折から生み出されてしまった駄作機が多いようだけれど、しかしこの2つの移行が大戦を挟んだごく短い期間に集中していることに、改めて技術と結びついた総力戦の加速度の目まぐるしさを観たようにも感じている。