岡崎武志『古本道入門』

私見だけれども、古本に関する新書というのも、意外に少ない。岩波新書中公新書辺りで決定版が出ていないし、岡崎をはじめ多くの古本本を出しているちくま文庫に対し、ちくま新書にも余り古本本は入っていない。

そういった中で、山本善行『関西赤貧古本道』新潮新書、2004年もそうだったが、中公新書ラクレというおよそ随筆に関心の無さそうな新書レーベルが、意外に健闘していたりする。


コンパクト、かつ入門書としての目配りも広いのは良いし、買った古本を喫茶店でコーヒー片手に眺める等々、エッセイとしても読める。ただし、古本を売るということに関する記述はあったけれど、買って帰って溜まった古本をどう家に置いて、残していくのかという点だけは、もう少し記述があっても良かったのではないかと思う。その点は同じ著者の『蔵書の苦しみ』光文社新書を参照、ということか。


個人的な本書のミソは、「第5章 全国8大おすすめ古本町」と「第6章 ブックオフの使い道」だと思う。後者は2010年代初めのブックオフに関する概説としても、なかなか面白いし、前者は神保町を扱った第4章以上に、いわゆる地方都市における古本屋というものを入門者向けに扱った紀行文として、良い構想だったと思う。しかし著者絶賛の松本(139-141頁)に続いて長野(141-146頁)と長野県から2つも挙がっているのは意外だし、金沢(146-148頁)や京都(148-151頁)はともかく奈良(151-153頁)は少し意外だった。それと、意外に関西以西の西日本が少なかったようにも感じる。