荻原魚雷『書生の処世』

本の雑誌』での連載をまとめた1冊…ただし初出時に比べると各回について平均5-6行分を削った、とのことで、これは毎月読んでいる訳ではない読者にとっては、少し気になる異同だ。

出身地の三重県に帰省した際の話、仙台市のブックカフェでのイベントの話等、書評とエッセイの中間のような文章が多いのが、『本の怠け者』ちくま文庫以来余り変わっていないと言えそうだ。

意外に今回多かったのが、スポーツ関係の本を取り上げている文章で、スポーツ科学のようなアスリート向けの本まで入っているのは最初少し奇妙に思えたのだけれども、成程フリーランスで「運動」する著者が自身に引き合わすのは観客や観戦者ではなくスポーツ選手本人なのだ、と読了してから合点がいったように思う。

アップダイクを扱った文章の冒頭などは、そういったスポーツ関係への視点が活きた部分だろうか。

将棋ファンであることは何度か記されていた割に、将棋関係の本を取り上げているのも今回初めて目にした気がする。

「図書館漫画」を紹介している回を読んで、最近この主題が1つの「ジャンル」を形成していることに気づいてはいただけに、目の付け所はさすがと思う。

しかし余りにも著者と言えば「古本暮らし」(最初の単著『古本暮らし』晶文社より。この本、復刊するか、筑摩書房辺りで文庫化されないものかしら)の印象が強いのでほとんど自明になっていたのだけれども、ずっと図書館でデータ入力の仕事までしていたというのだから、なぜ「図書館暮らし」にはならなかったのだろうか、という疑問も初めて生じた回だった。

もう1つ、『活字と自活』本の雑誌社、2010年と本のサイズは同一…と思いきや微妙にこちらの方が横幅が小さくおよそ統一性がないのは、偶然なのか意図的なのかちょっと気になったところだったりする。