2015-01-01から1年間の記事一覧

2015年の回顧と反省

今年は「はてなブックマーク」の活動の延長として、ダイアリーでもいくらか積極的に活動することが出来ました。 id:DG-Lawさんの世界史教育に関する著作の書評とメモについては、著者であるDG-Lawさん御自身から過分なリプライを頂き、望外の結果を得ること…

回顧・2015 読んだ本 附 読んだ漫画

まず去年の「回顧・2014」の記事はこちらです。去年は余り読んだ本の個別記事を書いていなかったので、結構面白い本で個別記事なしの本も結構入っており、ともすれば今年の回顧記事よりも情報量も多いかと思います。 これは改めて言及しておきたい、という本…

阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男』

阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』平凡社、1974年 1970年代以降の、社会史を中心とする戦後歴史学の変容を代表する1冊、と史学史の読書案内風に位置づけることも出来るのだろうけれど、そういった予備知識ゼロで読んでも、面白さから一気に読…

大島弓子『ダリアの帯』

大島弓子『ダリアの帯』白泉社文庫、1996年 大島弓子と言えば「グーグー」の印象が強すぎて(実際、グーグーしか置いていない書店やブックオフも少なくない)、実質的な大島弓子経験1冊目。「サマータイム」といい「ダリアの帯」といい、絵柄か何かから「若…

手塚治虫『火の鳥 鳳凰編』

手塚治虫『火の鳥 鳳凰編』朝日ソノラマ、1978年 現在一番入手しやすいのは、手塚治虫全集版か、角川文庫版か、どちらかしら。黎明編・未来編・ヤマト編・異形編・復活編は繰り返し読んだ割に、シリーズ中屈指の傑作と称される鳳凰編は、実は15年ぐらい前に…

マイク・ロイコ『男のコラム』1

マイク・ロイコ 井上一馬訳『男のコラム』1 河出文庫、1992年 これも、荻原魚雷の『古本暮らし』晶文社、2007年や『活字と自活』本の雑誌社、で紹介されていなかったら、古本屋の棚で見つけられなかったであろう一冊。本文は282頁しかないけれど、108円だっ…

薄久代編著『色のない地球儀 資料・東大図書館物語』

薄久代編著『色のない地球儀 資料・東大図書館物語』同時代社、1987年 大学図書館、それも日本の大学図書館の歴史に詳しい層にとっては結構知名度が高いようなのだけれども、本郷に馴染のある東京大学の関係者や十五年戦争に関心のある読者にとっても、本書…

『まんが 羽生善治物語』

日本将棋連盟監修、高橋美幸原作、まきのまさる画『まんが 羽生善治物語』くもん出版、1995年『ヒカルの碁』という一大ヒット作を擁する囲碁漫画に対して、近年『3月のライオン』が登場した将棋漫画だけれども、これは将棋漫画の中でもかなりの奇書である1冊…

小野不由美『黄昏の岸 暁の天』

小野不由美『黄昏の岸 暁の天』新潮文庫、2014年 今年の回顧記事を出そうと思ったら、まだまだ既読で記事にしていない本が何冊もあって、取りあえず書けるものから書いていくことにする。 今年『風の万里 黎明の空』から『丕緒の鳥』までを一気に読んでいく…

『劇場版ガールズ&パンツァー』

『劇場版ガールズ&パンツァー』2015年 『ガールズ&パンツァー』全12話を楽しんだ人にとっては必見と言える作品で、12話分を受けたネタの数々が楽しめる。 逆に言えば、後述するようにこの劇場版単体で楽しめるような構成ではないので、まずはテレビシリーズ…

岡崎武志『古本道入門』

岡崎武志『古本道入門』中公新書ラクレ、2011年 私見だけれども、古本に関する新書というのも、意外に少ない。岩波新書・中公新書辺りで決定版が出ていないし、岡崎をはじめ多くの古本本を出しているちくま文庫に対し、ちくま新書にも余り古本本は入っていな…

小野不由美『図南の翼』

小野不由美『図南の翼』新潮文庫、2013年 新潮文庫版の『図南の翼』には、北上次郎の解説が付いている。 そしてこれは『本の雑誌』等の、書評やミステリーの世界に詳しい方々にとっては今更なお話だけれど、北上次郎はペンネームであり、目黒考二その人であ…

小野不由美『風の万里 黎明の朝』上・下

小野不由美『風の万里 黎明の朝』上 新潮文庫、2013年 小野不由美『風の万里 黎明の朝』下 新潮文庫、2013年 講談社文庫版で揃えていたところに、この夏偶々新潮文庫の新装版を棚で見つけ、かれこれ5年ぶりに中断していたこの巻の途中以降を読み終えた。陽子…

谷川史子『清々と』3 

谷川史子『清々と』3 少年画報社、2015年 少年画報社の漫画本は、カヴァーをめくると設定資料だったりカバーとは別のイラストだったりが描かれているという、ちょっとした豆知識を知ったという。しかしまあ前の1・2巻の記事からはや3年かあ、と思う。4巻で完…

谷川俊太郎編『辻征夫詩集』

谷川俊太郎編『辻征夫詩集』岩波文庫、2015年 荻原魚雷『本と怠け者』ちくま文庫、2011年で紹介されていることに去年気が付かなかったら、多分手に取ることさえ無かったかもしれない1冊。現代詩文庫を見ると正直多少慄いてしまうような当方だけに、「詩集」…

森薫『シャーリー』2 

森薫『シャーリー』2 エンターブレイン、2014年 確か『エマ』を一通り揃えてしまった後に、ブックオフで見つけて「お、『エマ』と同系統の作品かな」と思って買い込み、「どうも『エマ』のプロトタイプ臭いなあ」と思いながら読みだしてみると、いやもう何と…

小田実『われ=われの哲学』

小田実『われ=われの哲学』岩波新書黄版、1986年 小田実に対する悪評は、ウェブ上では事欠かない。 では彼の文章に対する悪評を見るかと言えば、まずお目にかからないのが常ではないだろうか。せいぜい、彼の文章の一部に示された認識の一部を、いささか暴…

岡崎武志『古本でお散歩』

岡崎武志『古本でお散歩』ちくま文庫、2001年 そもそも古本に関する本を読んだことのある人間は、読書する習慣のある人の中で1割にも満たないであろうから、古本本を複数読んでいる当方などは古本本に関してはまあ一応は有段者だろうと思わなくはないのだけ…

荻原魚雷『書生の処世』

荻原魚雷『書生の処世』本の雑誌社、2015年 『本の雑誌』での連載をまとめた1冊…ただし初出時に比べると各回について平均5-6行分を削った、とのことで、これは毎月読んでいる訳ではない読者にとっては、少し気になる異同だ。出身地の三重県に帰省した際の話…

清水知久『ベトナム戦争の時代』有斐閣新書

清水知久『ベトナム戦争の時代』有斐閣新書、1985年 読了後に記事を書いていない本が、何時の間にか溜まってしまっている。そして記事を書かない時期というのは、大抵は読む方も停滞している時期と言える。左足を踏み出して、右足も動かそうという訳である。…

はてなブックマーク別館 安倍晋三氏と創価学会

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015083002000118.htmlで言及したところ、意外に知られていない様子だったので、朝日新聞アエラ編集部『創価学会解剖』朝日文庫、2000年から紹介しておく。 自民党の一部が、新進党…

酒見賢一『後宮小説』新潮文庫

酒見賢一『後宮小説』新潮文庫、1993年 これもまたまたid:Mukkeさんの本棚企画で挙げられていた1冊。今年は『ルバイヤート』に始まり、読了本への氏の影響が結構顕著な年なのかもしれない。ここで取り上げる順番は前後するけれども、当方が小野不由美の「十…

中野三敏『和本のすすめ』

中野三敏『和本のすすめ -江戸を読み解くために』岩波新書新赤版、2011年 id:DG-Lawさんの世界史本について書いた時(http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150705/1436089732)、意外なところで役立った1冊。概説書としては、率直に言って結構説教臭い。日本人…

目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』

目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』本の雑誌社、2007年 1冊の本として読むのは、実は意外に難しいのかもしれない。何しろ3月から読みだして、読み終わったのが7月だったりする。『本の雑誌』に連載されていたこの日記、毎月連載されていた際の1月分が実に妥当だ…

塩川伸明『民族とネイション』岩波新書新赤版、2008年

塩川伸明『民族とネイション -ナショナリズムという難問』岩波新書新赤版、2008年 id:Mukkeさん一押しの1冊。今年ようやく積読から解消したのだけれど、最初に手に取って前半を斜め読みしたのは5年前の秋のはずで、長いようであっという間のような5年間なの…

読んだ本 オマル・ハイヤーム 小川亮作訳『ルバイヤート』岩波文庫、1979年改版

オマル・ハイヤーム 小川亮作訳『ルバイヤート』岩波文庫、1979年改版 もともと新年最初の読了本であったのだけれども、今回記事に書こうと思って再読。そう大部ではないので、頭から読んでもそれ程時間はかからない。どうしても詩というよりも、断片的な哲…

戦後70年首相談話を巡る一談話

「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」そのような宿命を背負わせたのは誰か、という点を考える時、私には安倍首相談話のこのフレーズは大変虚しいものに感じら…

読んだ本 遠山茂樹『歴史学から歴史教育へ』岩崎書店、1980年

遠山茂樹『歴史学から歴史教育へ』岩崎書店、1980年 この論文集に収録されている論文や講演記録は、主に1950年代・1960年代に書かれたものが中心となっている。 本書の構成をみると、冒頭の著者自身による「歴史教育論への私の立場-『はしがき』に代えて」に…

『シリーズ大学6 組織としての大学』岩波書店、2013年

『シリーズ大学6 組織としての大学 -役割や機能をどうみるか』岩波書店、2013年 まず編集委員の一人である広田照幸が「序論 大学という組織をどう見るか」で書いているように、とかく大学組織を民間企業と同一視して経営改革を求める議論が一般には強いけれ…

『シリーズ大学1 グローバリゼーション、社会変動と大学』岩波書店、2013年

『シリーズ大学1 グローバリゼーション、社会変動と大学』岩波書店、2013年 シリーズ出版当初に関心は持ったのだけれど、率直に言ってさほど積極的に読む気はしなかった。目次を見て、高等教育論が専門でない人間にとっては、いささか冗長な構成に感じられた…