日本将棋連盟の不正疑惑対応とその不当性について

過去3度の記事でも延々書いてきたことであるが、この事件は動きがあればある程、予想を上回る事態が起こり、全く閉口したくなる憂鬱な気分で記事を書くことになる。

既に3度の記事で提示した視点を再提示するものに過ぎないが、今この時点で改めて書きたいという心情の赴くままに書き連ねることにも多少の意味はあると考えて、以下の文章を記した。正確性を欠く面もあるやもしれないけれど、読者諸賢の御批判をお待ちしたい。


日本将棋連盟の設置した第三者委員会は、三浦弘行九段の不正疑惑について、不正行為に関する証拠が不十分で不正の事実を証明することが出来ないとする旨の調査結果を公表した。

このこと自体は、当方が何度か論じてきたことであるが、筋が通っていて、一連の事態の中では丸山忠久九段の筋の通った意思表示と共に、数少ない真っ当な判断であろう。

しかし第三者委員会は、竜王戦前の不十分な証拠での処分を「妥当」と判断している。これは連盟側から依頼された委員会として連盟寄りの姿勢であるという事情があるにしても、不当な判断と言わねばならない。当方が既に論じているように、不十分な証拠しか揃っていないのならば証拠不十分で不処分にすべきだったし、竜王戦という一タイトル戦の名声・評判のために、不十分な証拠で以て挑戦者を排除することこそが、人間対人間の勝負を保障するという将棋の根本精神を踏みにじる危うい行為だったのであり、緊急性は処分を妥当とする根拠にはなりえないと考えるべきではないか。連盟の理事会・常務会の責任を減免するような、政治的な決定とさえ言えるかもしれない。

さらに今回最も批判すべき点は、谷川浩司会長以下の日本将棋連盟理事会がこの第三者委員会判断に基づいて、三浦九段への謝罪は行ったものの、自らの責任を不問に付し会長ら3名の減俸処分にとどめた上に、朝日新聞の報道によれば何と救済措置として「不利益の救済策の一つとして、連盟は、来期もA級の地位を保証することを決定」したということにある(http://www.asahi.com/articles/ASJDW4TVNJDWUCVL01C.html 村瀬記者の、20時34分付けウェブ版記事)。

ここまでくると、棋士たちを中心に構成されているはずの将棋連盟理事会にとって、順位戦の重みとは、勝負の重みとは、将棋とは何なのか、と問わざるを得ない。勝手にA級順位戦を不戦敗にしておいて、その処分が不当だったら救済措置として即A級残留を確定するなど、これはもはや政治の世界の論理であって、勝負の、将棋の世界の論理ではないのではないか。A級順位戦を勝ち抜いて名人に挑戦すること3度、遂に名人位5期獲得によって永世名人の称号を得た谷川浩司会長にとって、A級棋士の地位は盤上での指し手ではなく連盟理事会の、それも一度目は明らかに不当だった決定に2度までも左右されても良い程度のものに過ぎないのだろうか。

A級順位戦の三浦九段不戦敗分の取り消しは当たり前だが、その分は指し直しにすべきで、そこで敗れたのならば一敗は一敗として計上するのが、棋士人生ある限り付いて回る順位戦の成績の決め方だろうと考える当方は、いささか単純すぎるのだろうか。

何度か書いてきたことだが、実力名人制以来、順位戦も将棋界も、盤上での指し手こそが全てという勝負の論理に貫かれて成立してきたのであり、その論理に反して挑戦者を差し替えた上、その処分の不当性をA級残留という超法規的措置で補おうとする連盟理事会はもはやこの論理に反しており、この論理に基づく将棋界が崩壊するか、この論理をないがしろにする理事会と将棋連盟が滅びるしかないのではないか、と当方は感じざるをえない。

将棋連盟の正会員たるプロ棋士一人一人が、一手一手の指し手に、人間対人間の勝負に意味を見出し一生を懸けるという将棋棋士の原点を改めて愚直に尊重し、良心的に行動することを、一将棋ファンとして願ってやまない。

第6期積読本順位戦

第6期積読順位戦

A級 挑戦1冊、降級2冊(読了本が出たら、1冊)

挑戦中 荻原魚雷『閑な読書人』晶文社


1 家永三郎『太平洋戦争』岩波現代文庫

2 『丸山眞男集』第3巻 岩波書店

3 市村弘正『小さなものの諸形態』平凡社ライブラリー

4 阿部謹也『北の街にて』講談社

5 齋藤純一『政治と複数性』岩波書店

6 丸山眞男『自己内対話』みすず書房

7 猪谷千香『つながる図書館』ちくま新書

8 鹿野政直『近代日本の民間学岩波新書黄版

9 吉沢南『個と共同性』東京大学出版会

10 岡田暁生『音楽の聴き方』中公新書


B級1組 昇級2冊、降級2冊(Aからの降級1の場合1)

1 岡崎武志『貧乏は幸せのはじまり』ちくま文庫

2 保立道久『ブックガイドシリーズ基本の30冊 日本史学』人文書院

3 『市民の図書館』増補版 日本図書館協会

4 米澤嘉博『戦後少女マンガ史』ちくま文庫 

5 ガイリンガー『ブラームス』芸術現代社

6 柴田三千雄『近代世界と民衆運動』岩波書店

7 『岩波講座日本歴史 近代3』岩波書店 

8 竹宮恵子風と木の詩』1 白泉社文庫

9 黒羽清隆『十五年戦争史序説』三省堂

10 プラトン『国家』上 岩波文庫

11 大谷正『日清戦争中公新書

12 渡辺京二北一輝ちくま学芸文庫

13 網野善彦『蒙古襲来』上 小学館ライブラリー



B級2組 昇級2冊、降級2冊

1 遅塚忠躬『史学概論』東京大学出版会

2 棚橋光男『王朝の社会』小学館ライブラリー

3 良知力『マルクスと批判者群像』平凡社ライブラリー

4 丸山眞男『現代政治の思想と行動』未来社

5 加藤周一『高原好日』ちくま文庫

6 米澤嘉博『戦後SFマンガ史』ちくま文庫

7 『中井正一評論集』岩波文庫

8 吉見義明『焼跡からのデモクラシー』上 岩波現代選書

9 藤井忠俊『国防婦人会』岩波新書黄版

10 『長谷川如是閑評論集』岩波文庫

11 藤田省三久野収鶴見俊輔『戦後日本の思想』岩波現代文庫

12 千野栄一プラハの古本屋』大修館書店

13 竹宮恵子風と木の詩』3 白泉社文庫 

14 近藤成一『シリーズ日本中世史2 鎌倉幕府と朝廷』岩波新書新赤版

15 萩尾望都トーマの心臓小学館文庫

16 大島弓子『夏の終わりのト短調白泉社文庫

17 安丸良夫出口なお』朝日選書

18 森政稔『変貌する民主主義』ちくま新書

19 『「慰安婦」問題を/から考える』岩波書店

20 上野英信『追われゆく坑夫たち』岩波新書青版

21 芝健介『武装SS』講談社選書メチエ

22 石母田正『歴史と民族の発見』東京大学出版会

23 竹宮恵子風と木の詩』2 白泉社文庫

24 藤井譲治『シリーズ日本近世史1 戦国乱世から太平の世へ』岩波新書新赤版

25 近藤ようこ『水鏡綺譚』ちくま文庫

26 大島弓子『バナナブレッドのプディング白泉社文庫

27 荒川章二『軍隊と地域』青木書店

28 逸村裕・竹内比呂也編『変わりゆく大学図書館勁草書房

29 上野修スピノザ『神学政治論』を読む』ちくま学芸文庫

30 マックス・ヴェーバー『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』岩波文庫 

31 古関彰一『日本国憲法の誕生』岩波現代文庫
 



C級1組 昇級2冊

1 『加藤周一セレクション』5 平凡社ライブラリー

2 勝俣鎮夫『一揆岩波新書黄版

3 『池田理代子短篇集』1 中公文庫コミック版

4 川崎良孝『図書館の歴史 アメリカ篇』日本図書館協会

5 鹿野政直『歴史のなかの個性たち』有斐閣

6 『世界の文学新集17 戦争と平和1』中央公論社

7 池内敏『竹島中公新書

8 ハシェク兵士シュベイクの冒険』1 岩波文庫

9 吉澤南『ベトナム戦争 民衆にとっての戦場』吉川弘文館

10 戸坂潤『日本イデオロギー論』岩波文庫

11 ルービン『図書館情報学概論』東京大学出版会

12 柄谷行人『世界史の構造』岩波現代文庫

13 山内志朗『普遍論争』平凡社ライブラリー

14 佐藤進一『古文書学入門』新版 法政大学出版局

15 フィッツジェラルドマイ・ロスト・シティー』中公文庫

16 中勘助銀の匙岩波文庫

17 宮内泰介・藤林泰『かつお節と日本人』岩波新書新赤版

18 高見順『敗戦日記』文春文庫

19 『日本残酷物語』1 平凡社ライブラリー

20 小川徹ほか編『公共図書館サービス・運動の歴史』1 日本図書館協会

21 広田照幸『ヒューマニティーズ教育学』岩波書店

22 大岡昇平ミンドロ島ふたたび』中公文庫

23 安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』青木書店

24 二宮宏之『マルク・ブロックを読む』岩波書店

25 小田実『「難死」の思想』岩波現代文庫

26 木畑洋一『二〇世紀の歴史』岩波新書新赤版

27 本田和子『異文化としての子ども』ちくま学芸文庫

28 内田義彦『社会認識の歩み』岩波新書青版

29 森武麿『集英社版日本の歴史 アジア・太平洋戦争集英社

30 鹿野政直『日本の近代思想』岩波新書新赤版

31 植村邦彦『市民社会とは何か』平凡社新書

32 宮地正人『日露戦後政治史の研究』東京大学出版会

33 黒田日出男『増補 絵画史料で歴史を読む』ちくま学芸文庫

34 『竹宮惠子SF短篇集2 オルフェの遺言』中公文庫コミック版

35 松本清張『或る「小倉日記」伝』新潮文庫

36 庄野潤三夕べの雲講談社文芸文庫

37 福永武彦『忘却の河』新潮文庫

38 マーティン・ジェイ『マルクス主義と全体性』国文社

39 前田愛『都市空間のなかの文学』ちくま学芸文庫

40 長尾真『電子図書館』新装版 岩波書店

41 宮地正人『国際政治下の近代日本』山川出版社

42 杉原達『中国人強制連行』岩波新書新赤版

43 市村弘正『増補 「名づけ」の精神史』平凡社ライブラリー

44 永原慶二『日本の歴史10 下剋上の時代』中公文庫

45 『竹宮惠子SF短篇集3 殺意の底』中公文庫コミック版

46 青木正美『古本屋五十年』ちくま文庫




C級2組 昇級3冊


1 大塚久雄『社会科学の方法』岩波新書青版

2 辻邦生『背教者ユリアヌス』上 中公文庫

3 橋川文三ナショナリズムちくま学芸文庫

4 江口圭一『十五年戦争研究史論』校倉書房

5 池澤夏樹『読書癖』1 みすず書房

6 永原慶二『新・木綿以前のこと』中公新書

7 牧原憲夫『客分と国民のあいだ』吉川弘文館

8 ウンベルト・エコ『論文作法』而立書房

9 原田敬一『シリーズ日本近現代史3 日清・日露戦争岩波新書新赤版

10 清水透『エル・チチョンの怒り』東京大学出版会

11 サラ・パレツキー『サマー・タイム・ブルース』ハヤカワ・ミステリ文庫

12 荒畑寒村『寒村自伝』上 岩波文庫

13 ベッケール・クルマイヒ『仏独通史 第一次世界大戦』上 岩波書店

14 鶴見俊輔久野収現代日本の思想』岩波新書青版

15 村井章介『中世倭人伝』岩波新書新赤版

16 野呂栄太郎『日本資本主義発達史』岩波文庫

17 加瀬和俊『集団就職の時代』青木書店

18 杉原達『越境する民 近代大阪の朝鮮人史研究』新幹社

19 ダール『ポリアーキー三一書房

20 永原陽子編『「植民地責任」論』青木書店

21 四方田犬彦『漫画原論』ちくま学芸文庫

22 大塚英志『「彼女たち」の連合赤軍文芸春秋

23 宮崎駿『本へのとびら』岩波新書新赤版

24 カレル・チャペック『ロボット』岩波文庫

25 小田実『何でも見てやろう』講談社文庫

26 佐藤忠男長谷川伸論』岩波現代文庫

27 安田浩『近代天皇制国家の歴史的位置』大月書店

28 高橋昌明『増補改訂 清盛以前』平凡社ライブラリー

29 小山力也『古本屋・ツアー・イン・ジャパン』原書房

30 澄田喜広『古本屋になろう!』青弓社

31 増田四郎『都市』筑摩書房

32 広井良典『コミュニティを問いなおす』ちくま新書

33 ヘーゲル『歴史哲学講義』上 岩波文庫

34 斎藤美奈子『モダンガール論』文春文庫

35 土肥恒之『西洋史学の先駆者たち』中公叢書

36 ジョン・ロック『完訳 統治二論』岩波文庫

37 岡部牧夫『海を渡った日本人』日本史リブレット

38 鶴見俊輔『限界芸術論』勁草書房

39 田中芳樹夏の魔術講談社文庫

40 堀田善衛『ミシェル 城館の人 第一部』集英社文庫

41 マクリーン『女王陛下のユリシーズ号』ハヤカワ文庫

42 くらもちふさこ天然コケッコー』1 集英社文庫

43 朝尾直弘『日本近世史の自立』校倉書房 

44 アンドルー・ゴードン『ミシンと日本の近代』みすず書房

45 吉澤誠一郎『シリーズ中国近現代史1 清朝と近代世界』岩波新書新赤版

46 清岡卓行アカシヤの大連講談社文芸文庫

47 木村靖二『第一次世界大戦ちくま新書

48 牧原憲夫『シリーズ日本近現代史2 民権と憲法岩波新書新赤版

49 吉田裕『現代歴史学と戦争責任』青木書店

50 ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』上 岩波書店

51 四方田犬彦『ソウルの風景』岩波新書新赤版

52 竹前栄治『占領戦後史』同時代ライブラリー

53 田尻宗昭『四日市・死の海と闘う』岩波新書青版

54 長井勝一『「ガロ」編集長』ちくま文庫

55 松沢弘陽『近代日本の形成と西洋経験』岩波書店、1993年

56 鶴見俊輔竹内好岩波現代文庫

57 渋谷定輔『農民哀史から六十年』岩波新書黄版、1986年

58 町村敬志『「世界都市」東京の構造転換』東京大学出版会

59 鹿野政直『近代社会と格闘する思想家たち』岩波ジュニア新書、2005年


第1期 松本清張ゼロの焦点』カッパノベルズ

第2期 なし

第3期 村井吉敬『エビと日本人』岩波新書新赤版

第4期 桜井英治『贈与と歴史学中公新書

第5期 前川恒雄『移動図書館ひまわり号』夏葉社

第5期積読本順位戦

第5期積読順位戦

A級 挑戦1冊、降級2冊(読了本が出たら、1冊)

挑戦中 前川恒雄『移動図書館ひまわり号』夏葉社


1 家永三郎『太平洋戦争』岩波現代文庫

2 『丸山眞男集』第3巻 岩波書店

3 荻原魚雷『閑な読書人』晶文社

4 阿部謹也『北の街にて』講談社

5 齋藤純一『政治と複数性』岩波書店

6 丸山眞男『自己内対話』みすず書房

7 猪谷千香『つながる図書館』ちくま新書

8 鹿野政直『近代日本の民間学岩波新書黄版

9 岡崎武志『貧乏は幸せのはじまり』ちくま文庫

10 市村弘正『小さなものの諸形態』平凡社ライブラリー


B級1組 昇級2冊、降級2冊(Aからの降級1の場合1)

1 保立道久『ブックガイドシリーズ基本の30冊 日本史学』人文書院

2 吉沢南『個と共同性』東京大学出版会

3 岡田暁生『音楽の聴き方』中公新書

4 米澤嘉博『戦後少女マンガ史』ちくま文庫 

5 ガイリンガー『ブラームス』芸術現代社

6 柴田三千雄『近代世界と民衆運動』岩波書店

7 『岩波講座日本歴史 近代3』岩波書店 

8 遅塚忠躬『史学概論』東京大学出版会

9 黒羽清隆『十五年戦争史序説』三省堂

10 プラトン『国家』上 岩波文庫

11 『市民の図書館』増補版 日本図書館協会

12 大谷正『日清戦争中公新書

13 竹宮恵子風と木の詩』1 白泉社文庫



B級2組 昇級2冊、降級2冊

1 『「慰安婦」問題を/から考える』岩波書店

2 棚橋光男『王朝の社会』小学館ライブラリー

3 網野善彦『蒙古襲来』上 小学館ライブラリー

4 丸山眞男『現代政治の思想と行動』未来社

5 加藤周一『高原好日』ちくま文庫

6 米澤嘉博『戦後SFマンガ史』ちくま文庫

7 『中井正一評論集』岩波文庫

8 吉見義明『焼跡からのデモクラシー』上 岩波現代選書

9 藤井忠俊『国防婦人会』岩波新書黄版

10 『長谷川如是閑評論集』岩波文庫

11 藤田省三久野収鶴見俊輔『戦後日本の思想』岩波現代文庫

12 勝俣鎮夫『一揆岩波新書黄版

13 竹宮恵子風と木の詩』3 白泉社文庫 

14 近藤成一『シリーズ日本中世史2 鎌倉幕府と朝廷』岩波新書新赤版

15 萩尾望都トーマの心臓小学館文庫

16 大島弓子『夏の終わりのト短調白泉社文庫

17 安丸良夫出口なお』朝日選書

18 森政稔『変貌する民主主義』ちくま新書

19 『加藤周一セレクション』5 平凡社ライブラリー 

20 上野英信『追われゆく坑夫たち』岩波新書青版

21 渡辺京二北一輝ちくま学芸文庫

22 千野栄一プラハの古本屋』大修館書店

23 竹宮恵子風と木の詩』2 白泉社文庫

24 藤井譲治『シリーズ日本近世史1 戦国乱世から太平の世へ』岩波新書新赤版

25 近藤ようこ『水鏡綺譚』ちくま文庫

26 大島弓子『バナナブレッドのプディング白泉社文庫

27 荒川章二『軍隊と地域』青木書店

28 良知力『マルクスと批判者群像』平凡社ライブラリー

29 上野修スピノザ『神学政治論』を読む』ちくま学芸文庫

30 逸村裕・竹内比呂也編『変わりゆく大学図書館勁草書房

31 石母田正『歴史と民族の発見』東京大学出版会

32 芝健介『武装SS』講談社選書メチエ

 



C級1組 昇級2冊

1 ルービン『図書館情報学概論』東京大学出版会

2 柄谷行人『世界史の構造』岩波現代文庫

3 『池田理代子短篇集』1 中公文庫コミック版

4 川崎良孝『図書館の歴史 アメリカ篇』日本図書館協会

5 鹿野政直『歴史のなかの個性たち』有斐閣

6 『世界の文学新集17 戦争と平和1』中央公論社

7 池内敏『竹島中公新書

8 ハシェク兵士シュベイクの冒険』1 岩波文庫

9 吉澤南『ベトナム戦争 民衆にとっての戦場』吉川弘文館

10 戸坂潤『日本イデオロギー論』岩波文庫

11 マックス・ヴェーバー『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』岩波文庫

12 古関彰一『日本国憲法の誕生』岩波現代文庫

13 山内志朗『普遍論争』平凡社ライブラリー

14 佐藤進一『古文書学入門』新版 法政大学出版局

15 フィッツジェラルドマイ・ロスト・シティー』中公文庫

16 中勘助銀の匙岩波文庫

17 宮内泰介・藤林泰『かつお節と日本人』岩波新書新赤版

18 高見順『敗戦日記』文春文庫

19 『日本残酷物語』1 平凡社ライブラリー

20 小川徹ほか編『公共図書館サービス・運動の歴史』1 日本図書館協会

21 広田照幸『ヒューマニティーズ教育学』岩波書店

22 大岡昇平ミンドロ島ふたたび』中公文庫

23 安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』青木書店

24 二宮宏之『マルク・ブロックを読む』岩波書店

25 小田実『「難死」の思想』岩波現代文庫

26 木畑洋一『二〇世紀の歴史』岩波新書新赤版

27 本田和子『異文化としての子ども』ちくま学芸文庫

28 内田義彦『社会認識の歩み』岩波新書青版

29 森武麿『集英社版日本の歴史 アジア・太平洋戦争集英社

30 鹿野政直『日本の近代思想』岩波新書新赤版

31 植村邦彦『市民社会とは何か』平凡社新書

32 宮地正人『日露戦後政治史の研究』東京大学出版会

33 黒田日出男『増補 絵画史料で歴史を読む』ちくま学芸文庫

34 『竹宮惠子SF短篇集2 オルフェの遺言』中公文庫コミック版

35 松本清張『或る「小倉日記」伝』新潮文庫

36 庄野潤三夕べの雲講談社文芸文庫

37 福永武彦『忘却の河』新潮文庫

38 マーティン・ジェイ『マルクス主義と全体性』国文社

39 前田愛『都市空間のなかの文学』ちくま学芸文庫

40 長尾真『電子図書館』新装版 岩波書店

41 宮地正人『国際政治下の近代日本』山川出版社

42 杉原達『中国人強制連行』岩波新書新赤版

43 市村弘正『増補 「名づけ」の精神史』平凡社ライブラリー




C級2組 昇級3冊


1 大塚久雄『社会科学の方法』岩波新書青版

2 辻邦生『背教者ユリアヌス』上 中公文庫

3 橋川文三ナショナリズムちくま学芸文庫

4 江口圭一『十五年戦争研究史論』校倉書房

5 永原慶二『日本の歴史10 下剋上の時代』中公文庫

6 永原慶二『新・木綿以前のこと』中公新書

7 牧原憲夫『客分と国民のあいだ』吉川弘文館

8 ウンベルト・エコ『論文作法』而立書房

9 原田敬一『シリーズ日本近現代史3 日清・日露戦争岩波新書新赤版

10 清水透『エル・チチョンの怒り』東京大学出版会

11 サラ・パレツキー『サマー・タイム・ブルース』ハヤカワ・ミステリ文庫

12 荒畑寒村『寒村自伝』上 岩波文庫

13 ベッケール・クルマイヒ『仏独通史 第一次世界大戦』上 岩波書店

14 鶴見俊輔久野収現代日本の思想』岩波新書青版

15 村井章介『中世倭人伝』岩波新書新赤版

16 野呂栄太郎『日本資本主義発達史』岩波文庫

17 加瀬和俊『集団就職の時代』青木書店

18 杉原達『越境する民 近代大阪の朝鮮人史研究』新幹社

19 ダール『ポリアーキー三一書房

20 永原陽子編『「植民地責任」論』青木書店

21 四方田犬彦『漫画原論』ちくま学芸文庫

22 大塚英志『「彼女たち」の連合赤軍文芸春秋

23 宮崎駿『本へのとびら』岩波新書新赤版

24 カレル・チャペック『ロボット』岩波文庫

25 ※小田実『何でも見てやろう』講談社文庫

26 佐藤忠男長谷川伸論』岩波現代文庫

27 安田浩『近代天皇制国家の歴史的位置』大月書店

28 高橋昌明『増補改訂 清盛以前』平凡社ライブラリー

29 小山力也『古本屋・ツアー・イン・ジャパン』原書房

30 澄田喜広『古本屋になろう!』青弓社

31 増田四郎『都市』筑摩書房

32 ※広井良典『コミュニティを問いなおす』ちくま新書

33 ※※ヘーゲル『歴史哲学講義』上 岩波文庫

34 ※斎藤美奈子『モダンガール論』文春文庫

35 ※土肥恒之『西洋史学の先駆者たち』中公叢書

36 ジョン・ロック『完訳 統治二論』岩波文庫

37 岡部牧夫『海を渡った日本人』日本史リブレット

38 鶴見俊輔『限界芸術論』勁草書房

39 田中芳樹夏の魔術講談社文庫

40 堀田善衛『ミシェル 城館の人 第一部』集英社文庫

41 マクリーン『女王陛下のユリシーズ号』ハヤカワ文庫

42 くらもちふさこ天然コケッコー』1 集英社文庫

43 朝尾直弘『日本近世史の自立』校倉書房 

44 『竹宮惠子SF短篇集3 殺意の底』中公文庫コミック版

45 吉澤誠一郎『シリーズ中国近現代史1 清朝と近代世界』岩波新書新赤版

46 清岡卓行アカシヤの大連講談社文芸文庫

47 木村靖二『第一次世界大戦ちくま新書

48 牧原憲夫『シリーズ日本近現代史2 民権と憲法岩波新書新赤版

49 吉田裕『現代歴史学と戦争責任』青木書店

50 青木正美『古本屋五十年』ちくま文庫

51 四方田犬彦『ソウルの風景』岩波新書新赤版

52 竹前栄治『占領戦後史』同時代ライブラリー

53 田尻宗昭『四日市・死の海と闘う』岩波新書青版

54 長井勝一『ガロ編集長』ちくま文庫

55 池澤夏樹『読書癖』1 みすず書房

56 松沢弘陽『近代日本の形成と西洋経験』岩波書店、1993年

57 アンドルー・ゴードン『ミシンと日本の近代』みすず書房

58 ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』上 岩波書店


第1期 松本清張ゼロの焦点』カッパノベルズ

第2期 なし

第3期 村井吉敬『エビと日本人』岩波新書新赤版

第4期 桜井英治『贈与と歴史学中公新書

恐るべき三笠宮

ぼけっと小西四郎・遠山茂樹編『服部之總・人と学問』日本経済評論社、1988年を眺めていたら、没後30年集会で今年亡くなった三笠宮が日本近代史研究会とのかかわりや服部之総との付き合いを振り返った発言の中で、

私なんか立場上非常に冷たいお付き合いが多いのでございますけれども、それだけに服部先生、また周囲の方々とのお付き合いというのが、なんともいえない温かい楽しい思い出だった事を記憶しております(同書、111頁)


とまで語っていて、「赤い皇族」と揶揄されるだけのブラックユーモアだなあと感じたのだった。歴史研究者として紀元節批判を公表する程筋を通した三笠宮自身にとっては、これくらいの発言はむしろ自然だったのかもしれないけれど。

第4期積読本順位戦

単なる積読本を何となく並べて、将棋の順位戦風にしてみただけのリスト。現実の順位戦は何とも歯がゆい事態になっているけれど…


A級 挑戦1冊、降級2冊(読了本が出たら、1冊)

挑戦中 桜井英治『贈与の歴史学中公新書


1 前川恒雄『移動図書館ひまわり号』夏葉社

2 『丸山眞男集』第3巻 岩波書店

3 荻原魚雷『閑な読書人』晶文社

4 阿部謹也『北の街にて』講談社

5 齋藤純一『政治と複数性』岩波書店

6 丸山眞男『自己内対話』みすず書房

7 保立道久『ブックガイドシリーズ基本の30冊 日本史学』人文書院

8 鹿野政直『近代日本の民間学岩波新書黄版

9 猪谷千香『つながる図書館』ちくま新書

10 家永三郎『太平洋戦争』岩波現代文庫


B級1組 昇級2冊、降級2冊(Aからの降級1の場合1)

1 市村弘正『小さなものの諸形態』平凡社ライブラリー

2 吉沢南『個と共同性』東京大学出版会

3 岡田暁生『音楽の聴き方』中公新書

4 米澤嘉博『戦後少女マンガ史』ちくま文庫 

5 ガイリンガー『ブラームス』芸術現代社

6 岡崎武志『貧乏は幸せのはじまり』ちくま文庫

7 『岩波講座日本歴史 近代3』岩波書店 

8 遅塚忠躬『史学概論』東京大学出版会

9 黒羽清隆『十五年戦争史序説』三省堂

10 プラトン『国家』上 岩波文庫

11 『市民の図書館』増補版 日本図書館協会

12 『「慰安婦」問題を/から考える』岩波書店

13  柴田三千雄『近代世界と民衆運動』岩波書店



B級2組 昇級2冊、降級2冊

1 加藤周一『高原好日』ちくま文庫

2 棚橋光男『王朝の社会』小学館ライブラリー

3 網野善彦『蒙古襲来』上 小学館ライブラリー

4 丸山眞男『現代政治の思想と行動』未来社

5 竹宮恵子風と木の詩』1 白泉社文庫

6 米澤嘉博『戦後SFマンガ史』ちくま文庫

7 ※『中井正一評論集』岩波文庫

8 吉見義明『焼跡からのデモクラシー』上 岩波現代選書

9 ※藤井忠俊『国防婦人会』岩波新書黄版

10 『長谷川如是閑評論集』岩波文庫

11 藤田省三久野収鶴見俊輔『戦後日本の思想』岩波現代文庫

12 勝俣鎮夫『一揆岩波新書黄版

13 ルービン『図書館情報学概論』東京大学出版会

14 近藤成一『シリーズ日本中世史2 鎌倉幕府と朝廷』岩波新書新赤版

15 萩尾望都トーマの心臓小学館文庫

16 大島弓子『夏の終わりのト短調白泉社文庫

17 安丸良夫出口なお』朝日選書

18 森政稔『変貌する民主主義』ちくま新書

19 大谷正『日清戦争中公新書

20 上野英信『追われゆく坑夫たち』岩波新書青版

21 渡辺京二北一輝ちくま学芸文庫

22 千野栄一プラハの古本屋』大修館書店

23 竹宮恵子風と木の詩』2 白泉社文庫

24 藤井譲治『シリーズ日本近世史1 戦国乱世から太平の世へ』岩波新書新赤版

25 ※近藤ようこ『水鏡綺譚』ちくま文庫

26 ※大島弓子『バナナブレッドのプディング白泉社文庫

27 ※柄谷行人『世界史の構造』岩波現代文庫

28 良知力『マルクスと批判者群像』平凡社ライブラリー

29 上野修スピノザ『神学政治論』を読む』ちくま学芸文庫

30 ※荒川章二『軍隊と地域』青木書店

31 ※逸村裕・竹内比呂也編『変わりゆく大学図書館勁草書房

32 ※『加藤周一セレクション』5 平凡社ライブラリー  

33 ※竹宮恵子風と木の詩』3 白泉社文庫 



C級1組 昇級2冊、降級点7冊 降級3冊

1 木畑洋一『二〇世紀の歴史』岩波新書新赤版

2 長尾真『電子図書館』新装版 岩波書店

3 『池田理代子短篇集』1 中公文庫コミック版

4 川崎良孝『図書館の歴史 アメリカ篇』日本図書館協会

5 鹿野政直『歴史のなかの個性たち』有斐閣

6 『世界の文学新集17 戦争と平和1』中央公論社

7 ※池内敏『竹島中公新書

8 ハシェク兵士シュベイクの冒険』1 岩波文庫

9 吉澤南『ベトナム戦争 民衆にとっての戦場』吉川弘文館

10 戸坂潤『日本イデオロギー論』岩波文庫

11 マックス・ヴェーバー『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』岩波文庫

12 古関彰一『日本国憲法の誕生』岩波現代文庫

13 山内志朗『普遍論争』平凡社ライブラリー

14 佐藤進一『古文書学入門』新版 法政大学出版局

15 ※フィッツジェラルドマイ・ロスト・シティー』中公文庫

16 中勘助銀の匙岩波文庫

17 ※宮内泰介・藤林泰『かつお節と日本人』岩波新書新赤版

18 高見順『敗戦日記』文春文庫

19 『日本残酷物語』1 平凡社ライブラリー

20 ※小川徹ほか編『公共図書館サービス・運動の歴史』1 日本図書館協会

21 ※広田照幸『ヒューマニティーズ教育学』岩波書店

22 大岡昇平ミンドロ島ふたたび』中公文庫

23 安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』青木書店

24 二宮宏之『マルク・ブロックを読む』岩波書店

25 小田実『「難死」の思想』岩波現代文庫

26 芝健介『武装SS』講談社選書メチエ

27 本田和子『異文化としての子ども』ちくま学芸文庫

28 ※内田義彦『社会認識の歩み』岩波新書青版

29 森武麿『集英社版日本の歴史 アジア・太平洋戦争集英社

30 鹿野政直『日本の近代思想』岩波新書新赤版

31 ※植村邦彦『市民社会とは何か』平凡社新書

32 宮地正人『日露戦後政治史の研究』東京大学出版会

33 黒田日出男『増補 絵画史料で歴史を読む』ちくま学芸文庫

34 『竹宮惠子SF短篇集2 オルフェの遺言』中公文庫コミック版

35 ※松本清張『或る「小倉日記」伝』新潮文庫

36 ※庄野潤三夕べの雲講談社文芸文庫

37 ※福永武彦『忘却の河』新潮文庫

38 ※マーティン・ジェイ『マルクス主義と全体性』国文社

39 ※前田愛『都市空間のなかの文学』ちくま学芸文庫

40 ※石母田正『歴史と民族の発見』東京大学出版会






C級2組 昇級3冊


1 大塚久雄『社会科学の方法』岩波新書青版

2 辻邦生『背教者ユリアヌス』上 中公文庫

3 橋川文三ナショナリズムちくま学芸文庫

4 江口圭一『十五年戦争研究史論』校倉書房

5 永原慶二『日本の歴史10 下剋上の時代』中公文庫

6 永原慶二『新・木綿以前のこと』中公新書

7 牧原憲夫『客分と国民のあいだ』吉川弘文館

8 ウンベルト・エコ『論文作法』而立書房

9 原田敬一『シリーズ日本近現代史3 日清・日露戦争岩波新書新赤版

10 清水透『エル・チチョンの怒り』東京大学出版会

11 サラ・パレツキー『サマー・タイム・ブルース』ハヤカワ・ミステリ文庫

12 荒畑寒村『寒村自伝』上 岩波文庫

13 ベッケール・クルマイヒ『仏独通史 第一次世界大戦』上 岩波書店

14 鶴見俊輔久野収現代日本の思想』岩波新書青版

15 杉原達『中国人強制連行』岩波新書新赤版

16 野呂栄太郎『日本資本主義発達史』岩波文庫

17 加瀬和俊『集団就職の時代』青木書店

18 杉原達『越境する民 近代大阪の朝鮮人史研究』新幹社

19 ダール『ポリアーキー三一書房

20 永原陽子『「植民地責任」論』青木書店

21 四方田犬彦『漫画原論』ちくま学芸文庫

22 大塚英志『「彼女たち」の連合赤軍文芸春秋

23 宮崎駿『本へのとびら』岩波新書新赤版

24 カレル・チャペック『ロボット』岩波文庫

25 ※小田実『何でも見てやろう』講談社文庫

26 佐藤忠男長谷川伸論』岩波現代文庫

27 安田浩『近代天皇制国家の歴史的位置』大月書店

28 高橋昌明『増補改訂 清盛以前』平凡社ライブラリー

29 小山力也『古本屋・ツアー・イン・ジャパン』原書房

30 澄田喜広『古本屋になろう!』青弓社

31 増田四郎『都市』筑摩書房

32 ※広井良典『コミュニティを問いなおす』ちくま新書

33 ※※ヘーゲル『歴史哲学講義』上 岩波文庫

34 ※斎藤美奈子『モダンガール論』文春文庫

35 ※土肥恒之『西洋史学の先駆者たち』中公叢書

36 ジョン・ロック『完訳 統治二論』岩波文庫

37 ※岡部牧夫『海を渡った日本人』日本史リブレット

38 ※鶴見俊輔『限界芸術論』勁草書房

39 ※※田中芳樹夏の魔術講談社文庫

40 ※堀田善衛『ミシェル 城館の人 第一部』集英社文庫

41 ※※マクリーン『女王陛下のユリシーズ号』ハヤカワ文庫

42 ※※くらもちふさこ天然コケッコー』1 集英社文庫

43 朝尾直弘『日本近世史の自立』校倉書房 

44 ※宮地正人『国際政治下の近代日本』山川出版社

45 ※吉澤誠一郎『シリーズ中国近現代史1 清朝と近代世界』岩波新書新赤版

46 ※※清岡卓行アカシヤの大連講談社文芸文庫

47 ※※木村靖二『第一次世界大戦ちくま新書

48 ※牧原憲夫『シリーズ日本近現代史2 民権と憲法岩波新書新赤版

49 ※吉田裕『現代歴史学と戦争責任』青木書店

50 ※青木正美『古本屋五十年』ちくま文庫

51 ※※四方田犬彦『ソウルの風景』岩波新書新赤版

52 ※※竹前栄治『占領戦後史』同時代ライブラリー

53 ※村井章介『中世倭人伝』岩波新書新赤版

54 長井勝一『ガロ編集長』ちくま文庫

55 『竹宮惠子SF短篇集3 殺意の底』中公文庫コミック版

56 田尻宗昭『四日市・死の海と闘う』岩波新書青版

57 市村弘正『増補 「名づけ」の精神史』平凡社ライブラリー



第1期 松本清張ゼロの焦点』カッパノベルズ

第2期 なし

第3期 村井吉敬『エビと日本人』岩波新書新赤版

加藤寛治日記と1929年の美保関滞在について

早いもので1年が過ぎてしまったけれど、DG-Lawさんが松江市美保関の旅館で発見された、加藤寛治の1929年の美保関滞在について
(http://blog.livedoor.jp/dg_law/archives/52299815.html)。

「しかし,加藤寛治ってひょっとして美保関事件の時の滞在なのでは……昭和4年だから違うか。逆に言ってよく泊まりに来たな。」
とはDG-Lawさんの感想で、それを読んだ私も全く同じような感想だった。そもそも私の場合、美保関と聞いても連合艦隊の演習事故しか浮かばなかったし、美保関事件を最初に知った阿川弘之『軍艦長門の生涯』上、新潮文庫、1982年(http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN01498398艦隊これくしょんの波に乗ってしれっと復刊しないかな)では、事故時の連合艦隊司令長官である加藤と連合艦隊参謀長だった高橋三吉海軍少将については相当辛辣な書かれようであっただけに、つくづく良く泊まったものだという印象だった。なお高橋も責任を問われるどころか連合艦隊司令長官まで栄達しているのは、多少海軍に詳しい方ならご存知の話だろう。

そしてその記事のブックマークhttp://b.hatena.ne.jp/entry/blog.livedoor.jp/dg_law/archives/52299815.html加藤寛治の日記でこの時の記事が見つかるかも…などと書いておいて早1年、繰り返すがいい加減な当方である。

さて加藤の日記が収録されているのは『現代史資料』の続編、伊藤隆他編『続・現代史資料 5 海軍 加藤寛治日記』みすず書房、1994年(http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN11217247)であり、当方は以前関東大震災時の記述を読んだことが在ったので、半ばあてずっぽで1929年の記事も収録されているだろうなどと述べたのだが、実際には「震災日誌」の次が「昭和四年」なので、結構収録範囲ぎりぎりであった。

1929年の加藤寛治日記は、1日当たりの記述はごく短い日も多い。例えば加藤が軍事参議官から軍令部長に就任した前後である1月22日の日記でも、

一月二十二日 火 fine 8pm親任式、鈴木〔貫太郎、大将〕侍従長と仝時なり。夕大臣邸にて軍事参議官会。此日昭和六年度までの補充計画に付閣僚連署の覚書を示さる

といった程度(前掲伊藤他編、76頁。〔〕は同書の註)。

加藤が美保関に出発する直前の記事には、「妙高にて軍縮関係者を招待する。大成功。但し財部の演説笑ひ物となる。」という、御存知の海軍軍縮条約を巡る艦隊派対条約派の対立を思わせるような少々おっかない記事もあったりするけれども(同書、83頁)、概して感情を交えない淡々とした記述が続いている印象だ。

なお偶々見かけた、「一月十六日 水 fine」の記事の中で、
国技館に相撲を見る。大番狂はせにて近来なき熱狂。」(同76頁)の部分は、相撲通のDG-Lawさんには誰の取組みか判別可能なのかもしれないけれども、註なしには当方には全く判別不能な部分だった。同日の記事の後半部分には丁寧な註が付いていて、珍田捨巳侍従長が死去してその後任問題が起こり、関連して斎藤実、安保清種、山下源太郎の三大将らの名前が書かれていることが読み取れるのと対称的だった。

さて、美保関滞在を含む8月4日からの加藤の日記を追うと、 

八月四日 日
出雲大社(参拝)を経て美保湾の艦隊に向ふ。
八・四五P発宝塚に向ふ。

八月五日 月
宝塚ホテルに小休す。夕川口来る。小酌す。
一〇・五〇P発夜行、大社に向ふ。

八月六日 火
午前大社参拝。夕松江。皆美館に泊す。高橋市長大に歓迎す。鳥取と島根の紀念塔に一〇〇円宛寄附す。

八月七日 水
午前境と美保関の忠魂碑に参拝。美保関にて歓迎さる。衣笠に乗艦。

八月八日 木
九A出港、5S、4Sの戦技と夜戦を見る。

八月九日 金
未明栗田湾□直舞鶴に行き、一〇・五〇Aの汽車にて亀岡に行き、保津川を下り嵐山「ちどり」に晩餐を為す。一菊(久子)大につとむ。九・五〇P発帰京。財部、安保、竹下〔勇、大将、軍事参議官〕同行。

といった具合であった(同83頁)。

こうして見ると、やはり2年前に自身が強いた過酷な演習による事故については特に言及もなく、美保関での「歓迎」を記している。そして出雲大社と演習からの帰り道に、京都の嵐山で芸者だろうか、宴席を設けてお楽しみだったという、さすがmmkの海軍士官の世界といった感じの記述でいささか毒気を抜かれたというところである。

改めて宿泊場所に着目すると、実は美保関の福間館に加藤が滞在したことが明示された具体的な記述は、見当たらないことが分かる。宝塚のホテルに滞在した後、出発駅は明示していないが8月5日の午後10時50分発の夜行で出雲方面に向かっているのでこの日は車中泊、翌6日は出雲大社参拝の後夕方に松江市に到着し、「皆美館」という松江市のこちらも結構な文化人達が滞在したことのある旅館に宿泊したという記述がある。そうなると8月7日に、美保関の忠魂碑(日露戦争後建立のものだろうか)参拝の後で、「美保関にて歓迎さる」という記述の部分で滞在したのだろうか。

8月7日には既に「衣笠に乗艦」という記述があるので、素直に理解するならば7日は重巡洋艦衣笠の艦内に泊まったとも読めるけれども、翌8月8日の艦隊が午前9時の出発だったという点からすると、一旦衣笠に乗艦した後美保関にて宿泊したか、美保関の旅館には宿泊ではなく訪問時に滞在し休憩したか、のいずれかということになるだろうか。

またはっきりとは判読できないが、どうもDG-Lawさんの撮られた写真だと、加藤寛治の訪問は「昭和四年九月」と書かれているようだけれども、これは昭和四年八月であるべきところだろう。1929年9月には加藤は山陰方面を訪問していないし、1930年9月・1931年9月についても念のため確認したがそのような記述は存在しなかった。なお1930年9月はまさにロンドン海軍軍縮会議を巡る動きが活発な時期であり緊迫した記述も見られている他、1931年9月の後半には満州事変勃発に関連する記事もある。

以上、少なくとも加藤寛治の日記に当たる限り、加藤の1929年8月の美保関訪問は史料上も確かであり、美保関の旅館についても史料上は滞在か宿泊かははっきりしないがこれは宿泊と推測しても良いと思われるけれども、旅館に掲げる以上は9月ではなく8月とした方が良いのではなかろうか、という辺りで、1年も間が空いた割にさしたる考察もないこの小文を終えることとしたい。

『君の名は。』(2016年)の鉄道描写 或いは二度見のすすめ

以前書いた『君の名は。』の記事(http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20160904/1472915838)で、推測扱いだった鉄道描写について確認する為に、『君の名は。』のロードショーに再度行ってきた。

結論から言うと1回目で見逃したり推測を誤ったりした点が多々あった訳だが、2回目の方が1回目よりも楽しめた。脚本構成の問題点は既に分かっているし、ハードルをむやみやたらに上げることもないのと、全体像や設定を気にせずに映像を眺める時、この作品のそれぞれのシーンはとても良く出来ていると言えるからだろう。

という訳で、『君の名は。』を楽しみたい人には、2度観に行くことをお勧めする。

…さて、二度目は如何でしたか。
いやー、最後の主人公男が主人公女と上野駅のホームですれ違い、まさに「あけぼの」の発車直前に気付く辺りが良かったですねえ。

…という記述が大嘘だと気付いた方だけ、お読み下さい。警告致しましたので、以下はネタバレありです。


脚本構成がどうにも疑問で、全体の構成で一本筋が通っていればもっと面白い良作だったのは間違いないのにとは正直改めて感じたが、前回その点は色々と書いたので、そちらをご参照頂くということで今回は設定・構成については触れないことにしたい。

全体の設定・構成を度外視すると、細部の脚本つまり個々の台詞にしても、シーンごとの作画にしても、かなり良く、作画と美術は全編かなりの高水準を維持しており、この点だけでも一見の価値があるとは改めて感じた。

個々の台詞や描写もそれぞれ上手く、例えば四葉が普段は「ご・は・ん」で、御神体行きの日だけ「い・く・よ」と三葉を起こしている辺りなどきめが細かく、次のシーンで休日なのになぜ制服を着ているのかと問う伏線にもなっている。瀧が授業中に糸守の記憶を必死に絵に描くシーンは繰り返しがあるのだが、2度目の時周りの生徒たちは疲れてぼーっとした描写になっており、瀧が絵に長時間没頭し続けていることを1カットで表している。

OPの初めに、瀧と三葉が頭一つ背が違う次の絵では同じ背になっており、これなどは2回目で初めて分かる、3年間の時間のずれを細部でしっかりと描いたもので、正直細かさに感心してしまった。

しかし、どうも作中の組紐ではないが、個々の糸の組み方自体はかなり繊細で巧みなのに、肝心の最後の紐の収束が上手くいっていない、糸全体を貫く大きな構図が余りしっかりしていない、このために多くの飾りが飾り止まりに終わってしまっていると改めて感じざるを得なかった。


さていよいよ鉄道描写について振り返っておこう。

まず冒頭部、ラストシーン時の姿の二人が描写されるシーンで、新宿駅と思しきターミナル駅に出入りする列車が描かれるが、ここでは二人が乗車する直接的な描写はない。

次に、三葉が最初に瀧に入れ替わった日、バイト帰りにやや空いた車内に座りながらスマホを操作する図がある。ここで重要なのは、瀧に入った三葉(以下単に三葉)が覗くスマホの中身で、路線情報と思しき画面で新宿駅発代々木駅経由の情報が表示されている。

今回観返して確定した推測として、瀧の最寄り駅は、奥寺先輩との「デート」について待ち合わせ場所を単に「駅前」と三葉が申し送っているがその待ち合わせ場所は四ツ谷駅前であること、またその予定を知らず慌てて出発した瀧が徒歩で四ツ谷駅に向かっていること、瀧が飛騨の糸森に落ちる彗星を屋上から眺める時、新宿の高層ビル群の先に彗星が落下していく、つまり瀧の自宅は新宿より東であること、以上の諸点から四ツ谷駅と断定して差し支えあるまい。終盤で奥寺先輩が久しぶりに瀧を訪ねる時、集合場所に四ツ谷駅を指定し近くまで来たからと言っていることも、瀧の生活圏内に四ツ谷駅が在ることの傍証だろう。

その点から、この夜三葉はバイト先のレストランを出発し、新宿駅から列車に乗って四ツ谷駅まで帰ったと推測される。ただそうすると妙なのは、わざわざ代々木駅で山手線から中央・総武線各駅停車に乗り換えている点である。

これは、新宿駅では同じホームで隣り合っており乗り換えも容易な両線が、代々木駅では別ホームになっており乗り換えに時間の掛かることを、東京生活に慣れていない三葉が知らずに、つい路線図通り代々木駅まで行ってから中央・総武線各駅停車に乗り換えた、とすれば行動自体は別にそう奇怪でもないが、問題は最短経路を表示するはずの路線情報が、なぜわざわざ乗り換え時間のかかる代々木駅経由の経路を提示しているのか、である。

本来路線情報は新宿駅-四ツ谷駅間の直通経路である中央線快速電車か、時間的にちょうど良い快速がないのならば最初から新宿駅で各駅停車に乗ることを提示していなければおかしいはずである。瀧の自宅が四ツ谷に在り、新宿方面から四ツ谷に帰宅することと、三葉が東京の鉄道事情に疎いことの両方を描写する為にわざわざ路線情報のカットを入れたと思われるが、路線情報が不正確という、鉄道の観点からは中途半端な描写になったようだ。

次に新幹線の描写は、これは前回書いた疑問そのままで、東京発名古屋行の下り東海道新幹線では3人掛けシートは進行方向左側つまり太平洋側に在り、陸側の進行方向右側に2人掛けシートが在り、というのが実際なので、作中では進行方向右側に3人掛けシートがあるのは逆である。

同様に、名古屋発に乗ったと思しき三葉の上京時、進行方向右側が2人掛けシートらしき(こちらは直接は描写されていないが)構図なのも実際とは逆であろう。

三葉は上京後、駅のベンチでくたくたになっている所を、入線してきた総武線各駅停車に瀧が乗っているところに出会い乗り込むが、この駅は柱の「よよぎ」から代々木駅で確定であり、実際に代々木駅中央・総武線各駅停車の千葉方面行きホームと同じく薄い壁がある。

さてその後三葉は瀧に話しかけるも3年間のズレの為怪訝な顔をされ、いたたまれずに列車を降り別れるのだけれども、このシーンでの問題は、瀧と三葉が別れるのは列車の入線するシーンから四ツ谷駅だと明示されており、なぜか三葉は降りるのに最寄り駅の瀧が降りない点であろう。本来ならば四ツ谷の手前、代々木より後の千駄ヶ谷信濃町でならば三葉のみが降りても不自然ではなかったのに、なぜ瀧は最寄り駅で降りていないのか、納得のいかないシーンで、恐らく入線するカットを四ツ谷駅としてしまったことに無理があったのではないか。


観返すと代々木駅は良く登場する割に、疑問点も残る描写が多い。

1番線 片側が壁 山手線外回り 新宿・池袋方面行き

2番線 3番線とに挟まれた共有の島式ホーム 山手線内回り 渋谷・品川方面行き

3番線 2番線とに挟まれた共有の島式ホーム 中央・総武線各駅停車 新宿・中野方面行き

4番線 片側が壁で、1番線と対になっている 中央・総武線各駅停車 千葉方面行き

三葉の表示した路線情報が、仮に山手線から各駅停車への乗り換えだとすると、なぜわざわざ2番線に着く山手線から、一度階段を上り下りして4番線に出ないと行けない代々木駅での乗り換えを提示していたのかは既に述べた。

就活中の瀧が、明らかにがらがらの平日昼間の総武線各駅停車に乗っていて、三葉らしき後姿をホームに認めて代々木駅で降りる。この描写、駅の構造はあっていて瀧は2・3番線の島式ホームと壁で囲まれたホームのどちらかを見渡しているが、問題は四ツ谷方面からだったのか、新宿方面からの入線だったのか、という点である。このシーン、直前にやはり新宿駅らしき描写が入っていたので新宿駅発代々木駅着という構図かと思いきや、瀧は明らかに2・3番線ホームに降り立っているので、それでは本来前述の三葉が座っていた4番線に入線しないと話がかみ合わなくなる。従って、新宿駅らしき描写は無視して、四ツ谷駅方面からやってきた瀧が2番線に降り立ち、2・3・4番線を見渡す、とすると辻褄は合う。

そもそも新宿からにせよ四ツ谷からにせよ、なぜ瀧が快速ではなく各駅停車に乗っているのかという疑問も出せなくはないけれど、まあ就職活動で気が滅入ってのんびりと各駅に乗りたくなったとしても不思議はあるまい。

ラスト、新宿駅らしき風景、湘南新宿ラインらしき列車がまた見えるが、結局冒頭部と同じで、これは新宿駅から三葉と瀧が乗車した、という直接的な描写ではない、と理解する他ない。

前回当方はこの描写から、二人は共に新宿駅発と推測して、代々木駅南方で山手線と総武線各駅停車が並走したと書いたけれども、観返すと三葉は千駄ヶ谷駅総武線各駅停車を降りたのは間違いないが、どうも瀧は新宿駅南口で降りたようなのと、並走シーン自体で思ったより双方の車体が離れず、また双方の車体が何線かは不明であった。

よって、四ツ谷駅を出る中央線快速に瀧が、総武線各駅停車に三葉が乗っていて、千駄ヶ谷駅新宿駅から共に歩き回って奇跡的に再会するという、更に広範囲での奇跡だった、ということになるのだろうか。

結局、湘南新宿ラインも含めた新宿駅らしき風景が、瀧と三葉の乗車経路自体と関わるのか不明瞭なのが難点で、新宿駅なのに京浜東北線らしき車体が描写されていたり、瀧の最寄り駅が四ツ谷駅なのは確定的なのを見ると(四ツ谷駅からと新宿駅からでは進行方向は当然逆になる)、鉄道の経路的な正確さを余り意識した描写でもなく、二人の行動とも別個の風景として新宿駅が点描されていた、という推測が妥当なようだ。

もともと新海誠自身が、鉄道ファン的な鉄道好きではなく、単に風景として鉄道が好きと語っているように、『君の名は。』の鉄道描写も、新宿駅から四ツ谷駅辺りを舞台としながらも、必ずしも地理的に正確ではないし、新宿駅の風景にしても、全ての列車が同じタイミングで全て動いている辺りは、場面の尺の都合もあるにしても、実際には入線済みで停車中の車体があったり、少しずれて重なったりするのが自然なところで、余りリアリティを追求していない感じである。これは風景描写にも反映されていて、新宿に統一されているかと思いきや、今回初めて厚木行きの標識と背後にあおい書店があるのはどうも渋谷らしいというカットがあったりしたのにも気付いた。

Z会の「クロスロード」以来、中央・総武線各駅停車と、それから中央・総武線の並走する御茶ノ水駅なり四ツ谷駅なりに風景として監督のこだわりがあるというところだろうか。

アニメ映画の鉄道描写として、当方が一番好きなのは高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ』で、最後に主人公がローカル線を降りて戻っていくラストシーンも良いけれど、何といっても寝台特急あけぼのの描写が圧巻で、薄暗い上野駅への入線シーンといい、山形駅に到着する時のシルエットの描写といい、いかにもマニア的だった。

鉄道描写に限らず、『おもひでぽろぽろ』は都市と農村部の対比といい、色々と比較できそうなのに案外『君の名は。』談義では参照されないものだなあとも。

ところで「古川図書館」として飛騨市図書館らしき図書館の描写が在り、なかなか綺麗な館内の様子はともかく、どうも作中では在住でも通学・通勤でなくても利用者登録をして雑誌まで含めた資料を借り出している辺り、現実より一段サービスが進んでいる様子。また終盤で就職活動中の瀧が都内の中央館クラスと思しき館で資料を読むシーンもあったけれど、あちらにはどこかモデルがあるのだろうか。