読んだ本 岩城宏之『音の影』

  • 岩城宏之『音の影』 文春文庫、2008年 299p 762.8

 頭文字のABC順に作曲家を取り上げてその作曲家に関する話を綴ったエッセイ。当然だがアルファベット毎に濃淡はあり、数人まとめて取り上げて一回で終わってしまう頭文字もあれば、Bのようにベートーヴェンブラームスなど複数の作曲家が複数回取り上げられている場合もある。
 更に言えば、回ごとに形式も大いに違う。音楽事典風に或る作曲家の特色を纏めている回もあれば、その作曲家の曲に関して指揮者である筆者が体験した話が語られる回もあり、時にはある作曲家から派生した別の話題に話が終始することもある。連載時にアルファベット順通りの順で執筆されたので、連載時期が各回の内容に影響を与えていることもある。例えばBの回が執筆されたのは武満徹が逝去した直後だったらしく、バッハに絡めてバッハ以上に武満が語られていたりする。だから好きな作曲家なのに話が余所へ行ってしまったり言及されなかったりということもあるので、「公平さ」をさほど求めないで読む必要はあるだろう。

 それから一つだけ、ランダムにも読めるがYの項についてはUの項を読んでから読まれるように。