『植物図鑑』(2016年)

  • 『植物図鑑』(2016年)

映画館で観たい洋画がなくて、偶々チラシで高畑充希主演なのを知っていた程度で観た作品。

余談ながら、ハイクでも書きましたが、映画の宣伝で高畑を出演させたバラエティ番組に、やはりゲストで石原慎太郎を出演させた日本テレビは何をやっているんだか。

何が良いって、主人公の住む団地の部屋の描写でしょうか。主人公の職業がそもそも不動産会社の営業だとか改装したとか、理由はついていて内装はそう古臭くないけれど、扉とか窓枠とかがいかにも標準的な団地建築で、団地映画という文脈では一見の価値があるのかも。

個人的には、これは何だか『耳をすませば』(1995年)を連想するなあと、団地という点に限定せず。アニメ映画が敢えて恋愛映画を作っていたのか、恋愛映画がアニメ映画風になっているのかは知りませんが。

中盤で主人公が男と寝るシーンで、ああこれはファンタジーじゃなくて恋愛ものなのね…と感じた程度にはファンタジーめいているだけに、後半主人公が消えた男を探し求めて挙句警察沙汰になるシーンが、妙に現実味がありました。現在だと月島雫は図書館の貸出カードで個人情報をどうこう出来ないだろうし、天沢聖司はストーカーとして突き出されかねないなあと。

男の素性は推理小説的には中盤で大体想像がつく訳で、最後の再会も少しひねった割には…そもそも西武線沿線から横浜はタクシーでも遠いんですがね…。後は主人公の勤務先の事務所も駅前の商店街みたいなところにあるのか、お弁当食べている高層ビル街みたいなところにあるのか、街の描写もそんなにリアリティはありません。

高畑は、「いい日旅立ち」を歌う時の声などはもっと重いのに、女優としてのモノローグだと妙に甘ったるい声が多かったり。主人公は親の再婚という影があるにしても、そう普通の恋愛から遠いようにも見えない辺りも、まあ人気女優なので仕方がないのでしょうが。部屋の奥に2・30冊文庫本が置かれていて、そこそこ本を読む人であるという描写は少し意外で、後々展開されるのかしらと思ったら単なる背景の小道具でした。