『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』1997年

ピアース・ブロスナンジェームズ・ボンドシリーズの2作目。悪役はメディア王で情報操作による謀略を仕掛けてくる訳だが、1990年代後半なのでハイテク技術は専ら情報の収集の方で使われていて、発信自体は紙の新聞(印刷所で輪転機が廻っている側での格闘シーンが在る)とテレビなのが時代的か。

ダニエル・クレイグ版に比べると全体にシニカルな感じ。もっとも、今見返すとバイク・チェイスのシーンは後のクレイグ版の長いチェイスシーンに通じる原型のようなところもある。

 

ボンド・ガール役が香港映画出身のミシェル・ヨーなので、歴代でも最もアクション・シーンが本格的で香港映画風の格闘シーンもほとんどスタントなしで撮っているという。『スカイ・フォール』のイヴのようにボンドと対等に現場で活動ができる女性役のはしり。『私を愛したスパイ』のバーバラ・バックKGBのスパイ役だったのにそれ程アクションがなく後半単なる人質役に甘んじたのとは対照的。対してゲッツ・オットーが演じる悪役の一人は『ロシアより愛をこめて』のロバート・ショウを思わせていて古典的なのが良い感じ。

イギリス海軍の23型フリゲートがたびたび登場。17mの大型模型を作ったとのことだが、その割には小さく見えるし、模型同士がいかにも近すぎるのももうちょっと工夫できないものか、と。敵艦があんなに近づいたら普通見張員が目視でも気付くと思うのだが…。『太平洋奇跡の作戦 キスカ』の軽巡洋艦の表現に比べても今一つで、やはり艦船の模型を使った特撮は難しいと改めて感じさせられるところ。

 

もともとは香港が題材の脚本だったそうで、香港返還の時期だっただけに政治的過ぎるとの判断から改稿となっていて香港が出てこなかったのも『黄金銃を持つ男』などと比較すると不自然で、まあ沖縄周辺の地図がとても不正確なことも含めて、『007は二度死ぬ』程ではないけれどアジア描写がいい加減なのは仕方がないか。