読んだ本 柳沼行『ふたつのスピカ』6〜9

 或る意味では極めて「ベタ」な設定と言われるかもしれないが、それも良さなのだとつくづく思う。主人公と同じ目標を目指す同級生たち、大人には見えない「ライオンさん」との交流。それが少しずつ深まっていく様子が良い。それにしても、巻を重ねるごとにライオンさんの寡黙さとでもいうか、語られざる過去の重さが浮かび上がってくる。
 協同で課題に挑む場面などは『11人いる!』を思わせ、これもやや「ベタ」という気がしないでもないけれど、宇宙を舞台としたSFではなく近未来という設定ながらこれだけ地球の地面に足を置き敢えて宇宙空間の描写をしないで夢の対象としての宇宙を描いている辺りは徹底している。