読んだ本 木村靖二『二つの世界大戦』

  • 木村靖二『二つの世界大戦』世界史リブレット46 山川出版社、1996年 90p 209.7

 世界史リブレットの特色は高等学校世界史で取り上げられている水準の知識を有していれば読むことが出来るように配慮されていることだろうが、それぞれの巻は大抵(1)高校世界史の教科書では余り取り上げられていない個別の具体的な主題について補い掘り下げる、(2)個々の事実の提示に終始せずに対象とする地域や時代の幅を広げて或る時代や歴史的な見方について全体的に捉え直す、の二つの方法のいずれかで構成されている傾向が在る。

 本書は後者の特色がはっきりと表れた構成になっている。第一次世界大戦第二次世界大戦、そしてその間の時代を1冊で扱いそれによって二つの大戦の起きた時代の大きな枠組みを描き出している。第二次世界大戦自体が数ページで記述されているように個々の事実(特に「各国史」的或いは「戦史」的な)の説明まではほとんど立ち入っていないが、それだけに個々の事実を考える前提となる時代全体についての説明は十分なされているので、この時代の捉え方に関心の在る人向けだろうと思う。著者の専門はドイツだが欧州各国をバランス良く取り上げアメリカや日本などについても言及している。

 ちなみに表題から連想される江口圭一『大系日本の歴史14 二つの大戦』(小学館、1989年 小学館ライブラリー版、1993年)も日本の中国大陸侵略や日中関係を丁寧に踏まえつつ二つの戦争を軸に同時期の日本の歴史を描いているので、世界史や現代史についての知識や関心はあるけれど高校日本史を履修していないという場合一読してみても宜しいと思う。