最近読んだ本

 余り理論的ではないが警察署レベルの取材が盛り込まれている点に特徴がある。警察の在り方や警察官を巡る不祥事などの問題は余り変わっていない印象。技術革新で警察の現場も相当に変化しているのだろうけれど。

 事件において鉄道が占める役割はそれ程高くない。三上刑事部長が余り登場せず(余り口も出さず)、本多捜査一課長の出番がやや目立つ点は珍しいのかもしれない。それにしてもこのシリーズに登場する刑事達は本人や近親者などが事件に巻き込まれることが多い。

 巻末の年表に19世紀や20世紀の「フランス革命」関係の事項や明治維新やマリヤ・スクロドフスカなどの文中で言及している史実も載っている辺りが、細かいことかもしれないけれど単にフランス革命の史実の説明に終始するようなことはない本書の性格を反映していると言えるのかもしれない。必ずしも時系列に基づかずに構成されているのに流れがつかみ易く、エピソードの羅列になることも無く、革命の「偉大と悲惨」に主題が絞られていて構造的な説明と情熱的な語り口が共存している。劇薬、という言葉(見方)に少しこだわりすぎているのではと思わされたりもしたけれど、これくらい一つの言葉や問題意識を中心に据えて書かれているからこその本書なのだろう。一つの変革期に的を絞ってその特色を描くという形式は(少なくとも岩波ジュニア新書では)意外に見られない入門書の構成だと思う。
 ちょうど昨年新著も出版されていたので意外だったのだが、著者は昨年死去されたとのこと。