連休に入ってから読んだ本

 
 寝る前に読み始めて、半分程読んだところでいい加減に寝ようと寝支度をするうちに続きが気になって、「少しだけ」のつもりで読むのを再開したら、寝ずに読み終えてしまった。P.127を読んで、作者の伏線にあまりにも簡単にはめられていたのに気付いた時は苦笑させられた。推理小説を読む時にもたまに感じさせられることだが、普段如何に常識的な思い込みに基づいて物を読んでいるかを感じさせられたといったところ。

 古代史や古代社会に興味の在る人は一読すると面白いのではないかと思う。異世界と現実世界の違いを軽視しない方が良いのかもしれないけれど、少なくとも私は古代の社会や国家について連想させられた。作者が文化人類学のプロパーであるだけあって、神話・歴史・権力・政治・民俗・都市などの描写と世界観はファンタジーという枠に留まっていない。優れた古代史の研究者や教育者ならば、本書の世界観や様々な描写を取っ掛かりに古代社会について色々なことを語ることが出来るのだろう。

 展開が読めなくて驚きの連続、という作品ではなく、或る程度予想された筋を丹念に描き切っていてどこか安心しながら読める、そんな作品だと思った。そういう点では(全然違う気もするが敢えて挙げると)ケストナーの『エーミールと探偵たち』のような印象。主人公以外の登場人物たちも良いのも含めて。

 ちなみに二木真希子が挿絵を担当している。スタジオジブリのアニメーターで、アニメに詳しい方はクレジットで彼女の名前を観た覚えがあるのではないだろうか。

 こちらは現実に日本列島に国家が形成されていくまでの段階についての通史。余りこの時期を扱った本は読んでいないので、知識不足は如何ともしがたく、連休前から読みだしてようやく読み切った格好。
 各地の発掘調査などを踏まえて、「日本列島」と一概に語れないくらい、北海道・東北・関東・近畿・中国四国・北部九州・南西諸島などのそれぞれの地域で様々な特色を持った文化や社会が展開していったことがしっかりと述べられているのだとは思う。けれども、そういった多様性を踏まえた上で時代の流れなどが描かれているだろうかという点に何となく疑問を感じてしまった。地域史の成果と時代区分論などはどう結びついていくのか、という辺りが余りはっきりとしなかった印象。