読んだ本(9月18日、19日)

 毎日新聞政治部『政変』(1986年、角川文庫 後1993年、現代教養文庫)を読み終えた。1974年、田中角栄の辞意表明を受けてから「椎名裁定」によって三木武夫が首相・自民党総裁に指名されるまでの実力者らの動きを追った内容。ノンフィクションとしては比較的心情や会話についての表現が多いのは気になったが、政界内部で権力を巡って実力者たちの思惑と暗躍とが蠢いている政治の一面を表している。戦後政治史の大枠を知らないと人物の相関関係や本書で扱われている政変の大前提などが分からなくなると思うので、新聞の連載記事なので読み易いが或る程度の知識を持っている人向け。大平正芳に関する部分などは伊藤昌哉『自民党戦国史』(朝日文庫)とはニュアンスが異なる印象を受けたので両者を比べてみても良いかもしれない。
 心情や会話の描写にも表れていると思うが、本書について考えさせられたのは当時新聞では報道されていない部分も含めた政治家たちの言動を、一体どのように取材して再構成したのかという点であり、その辺りに本書の同時代性と今日歴史となりつつある過去の時点での政治を振り返る上での限界を感じさせられるように思う。なお執筆は岩見隆夫・上西朗夫・岸井成格・橋本達明の四人。

 『政変』と並行して全く関係の無いトルストイ『光あるうち光の中を歩め』(原久一郎訳 1952年・1974年改版、新潮文庫)を読み出した。