小野不由美『図南の翼』

小野不由美『図南の翼』新潮文庫、2013年 新潮文庫版の『図南の翼』には、北上次郎の解説が付いている。 そしてこれは『本の雑誌』等の、書評やミステリーの世界に詳しい方々にとっては今更なお話だけれど、北上次郎はペンネームであり、目黒考二その人であ…

小野不由美『風の万里 黎明の朝』上・下

小野不由美『風の万里 黎明の朝』上 新潮文庫、2013年 小野不由美『風の万里 黎明の朝』下 新潮文庫、2013年 講談社文庫版で揃えていたところに、この夏偶々新潮文庫の新装版を棚で見つけ、かれこれ5年ぶりに中断していたこの巻の途中以降を読み終えた。陽子…

谷川史子『清々と』3 

谷川史子『清々と』3 少年画報社、2015年 少年画報社の漫画本は、カヴァーをめくると設定資料だったりカバーとは別のイラストだったりが描かれているという、ちょっとした豆知識を知ったという。しかしまあ前の1・2巻の記事からはや3年かあ、と思う。4巻で完…

谷川俊太郎編『辻征夫詩集』

谷川俊太郎編『辻征夫詩集』岩波文庫、2015年 荻原魚雷『本と怠け者』ちくま文庫、2011年で紹介されていることに去年気が付かなかったら、多分手に取ることさえ無かったかもしれない1冊。現代詩文庫を見ると正直多少慄いてしまうような当方だけに、「詩集」…

森薫『シャーリー』2 

森薫『シャーリー』2 エンターブレイン、2014年 確か『エマ』を一通り揃えてしまった後に、ブックオフで見つけて「お、『エマ』と同系統の作品かな」と思って買い込み、「どうも『エマ』のプロトタイプ臭いなあ」と思いながら読みだしてみると、いやもう何と…

小田実『われ=われの哲学』

小田実『われ=われの哲学』岩波新書黄版、1986年 小田実に対する悪評は、ウェブ上では事欠かない。 では彼の文章に対する悪評を見るかと言えば、まずお目にかからないのが常ではないだろうか。せいぜい、彼の文章の一部に示された認識の一部を、いささか暴…

岡崎武志『古本でお散歩』

岡崎武志『古本でお散歩』ちくま文庫、2001年 そもそも古本に関する本を読んだことのある人間は、読書する習慣のある人の中で1割にも満たないであろうから、古本本を複数読んでいる当方などは古本本に関してはまあ一応は有段者だろうと思わなくはないのだけ…

荻原魚雷『書生の処世』

荻原魚雷『書生の処世』本の雑誌社、2015年 『本の雑誌』での連載をまとめた1冊…ただし初出時に比べると各回について平均5-6行分を削った、とのことで、これは毎月読んでいる訳ではない読者にとっては、少し気になる異同だ。出身地の三重県に帰省した際の話…

清水知久『ベトナム戦争の時代』有斐閣新書

清水知久『ベトナム戦争の時代』有斐閣新書、1985年 読了後に記事を書いていない本が、何時の間にか溜まってしまっている。そして記事を書かない時期というのは、大抵は読む方も停滞している時期と言える。左足を踏み出して、右足も動かそうという訳である。…

はてなブックマーク別館 安倍晋三氏と創価学会

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015083002000118.htmlで言及したところ、意外に知られていない様子だったので、朝日新聞アエラ編集部『創価学会解剖』朝日文庫、2000年から紹介しておく。 自民党の一部が、新進党…

酒見賢一『後宮小説』新潮文庫

酒見賢一『後宮小説』新潮文庫、1993年 これもまたまたid:Mukkeさんの本棚企画で挙げられていた1冊。今年は『ルバイヤート』に始まり、読了本への氏の影響が結構顕著な年なのかもしれない。ここで取り上げる順番は前後するけれども、当方が小野不由美の「十…

中野三敏『和本のすすめ』

中野三敏『和本のすすめ -江戸を読み解くために』岩波新書新赤版、2011年 id:DG-Lawさんの世界史本について書いた時(http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150705/1436089732)、意外なところで役立った1冊。概説書としては、率直に言って結構説教臭い。日本人…

目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』

目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』本の雑誌社、2007年 1冊の本として読むのは、実は意外に難しいのかもしれない。何しろ3月から読みだして、読み終わったのが7月だったりする。『本の雑誌』に連載されていたこの日記、毎月連載されていた際の1月分が実に妥当だ…

塩川伸明『民族とネイション』岩波新書新赤版、2008年

塩川伸明『民族とネイション -ナショナリズムという難問』岩波新書新赤版、2008年 id:Mukkeさん一押しの1冊。今年ようやく積読から解消したのだけれど、最初に手に取って前半を斜め読みしたのは5年前の秋のはずで、長いようであっという間のような5年間なの…

読んだ本 オマル・ハイヤーム 小川亮作訳『ルバイヤート』岩波文庫、1979年改版

オマル・ハイヤーム 小川亮作訳『ルバイヤート』岩波文庫、1979年改版 もともと新年最初の読了本であったのだけれども、今回記事に書こうと思って再読。そう大部ではないので、頭から読んでもそれ程時間はかからない。どうしても詩というよりも、断片的な哲…

戦後70年首相談話を巡る一談話

「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」そのような宿命を背負わせたのは誰か、という点を考える時、私には安倍首相談話のこのフレーズは大変虚しいものに感じら…

読んだ本 遠山茂樹『歴史学から歴史教育へ』岩崎書店、1980年

遠山茂樹『歴史学から歴史教育へ』岩崎書店、1980年 この論文集に収録されている論文や講演記録は、主に1950年代・1960年代に書かれたものが中心となっている。 本書の構成をみると、冒頭の著者自身による「歴史教育論への私の立場-『はしがき』に代えて」に…

『シリーズ大学6 組織としての大学』岩波書店、2013年

『シリーズ大学6 組織としての大学 -役割や機能をどうみるか』岩波書店、2013年 まず編集委員の一人である広田照幸が「序論 大学という組織をどう見るか」で書いているように、とかく大学組織を民間企業と同一視して経営改革を求める議論が一般には強いけれ…

『シリーズ大学1 グローバリゼーション、社会変動と大学』岩波書店、2013年

『シリーズ大学1 グローバリゼーション、社会変動と大学』岩波書店、2013年 シリーズ出版当初に関心は持ったのだけれど、率直に言ってさほど積極的に読む気はしなかった。目次を見て、高等教育論が専門でない人間にとっては、いささか冗長な構成に感じられた…

簡易版読了本リスト 2015年 その1

気が向いたら、そのうち記事にしていきたいもので。 オマル・ハイヤーム 小川亮作訳『ルバイヤート』岩波文庫、1979年改版 塩川伸明『民族とネイション』岩波新書新赤版、2008年 大島弓子『ダリアの帯』白泉社文庫、1999年 目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』本…

稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』を巡るメモ(四)

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年 以下は、問題順に思いついたことをつらつらと(構成を考えられなくなってきた、とも言う)。10.アメリカ史の怪19世紀以降の近現代史の方…

稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』を巡るメモ(三)

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年実は一連の記事の中で、1か所だけ「社会思想社」になっていたので、訂正致しました。「既に倒産した現代教養文庫の版元じゃないよ」と言わ…

稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』を巡るメモ(二)

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年3.長大な問題集ようやく今回からが本書を読んでみての、中身に関するメモということになるけれども、まず前提として、今回メモの対象とす…

稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』を巡るメモ(一)

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年 1.はじめにこちらの1冊に関しては、昨日一応の「書評」を既に書いてみたので(http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150705/1436034081)、…

書評 稲田義智『絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』

稲田義智『大学入試問題問題シリーズ1 絶対に解けない受験世界史:悪問・難問・奇問・出題ミス集』社会評論社、2014年本書は、これまで大学の入学試験科目「世界史」で各大学が出題してきた入試問題について、著者がウェブ上で試みてきた評論を基に、「悪問…

はてなブックマーク別館 第5回 従軍慰安婦とアメリカの歴史教科書を巡って

この記事は、以下の4つの記事での議論への再応答です。http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150311/1426000131http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150328/1427521543http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150510/1431259199http://d.hatena.ne.jp/shigak19/2015052…

はてなブックマーク別館 第四回 従軍慰安婦とアメリカの歴史教科書を巡って

この記事は、以下の3つの記事での議論への再応答です。http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150311/1426000131http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150328/1427521543http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150510/1431259199 色々書いておられますが、要は 「安倍や…

小森健太朗・遊井かなめ編著『声優論』

小森健太朗・遊井かなめ編著『声優論 アニメを彩る女神たち 島本須美から雨宮天まで』河出書房新社、2015年 本書は単著としては恐らく第一号と言って良い、声優に関する評論集。 これまで声優に関する本と言えば、まずは声優自身による自伝的な本の系譜があ…

書房日記別館 第三回 従軍慰安婦とアメリカの歴史教科書を巡って

この記事は、以下の2つの記事での議論への再応答です。http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150311/1426000131 http://d.hatena.ne.jp/shigak19/20150328/1427521543前々回、前回は応答までに間が空いてしまったので、今回は1つ完成度よりも応答することの方…

水谷優子『ケロリンな日々』

水谷優子『ケロリンな日々』メディアワークス、1995年1990年代、いわゆる「第三次声優ブーム」の頃に出た声優本の1冊、ということになるだろうか。ただ、他の女性声優たちのエッセイ集がいかにも「アイドル」色が強そうなのに比べると、結構3枚目の部分もあ…